高校生のころ、父親が買ったトヨタのトラック、思い出とともに過ごした42年|1969年式 トヨタ ハイラックス Vol.1|アメリカ発! ニッポン旧車の楽しみ方

デーブ・ジャクソンさん所有の1969年式トヨタ・ハイラックスは、カリフォルニア州ニューアーク市の住宅地に、他の路上駐車のクルマに交じって止められていた。静かに前を見つめているようなたたずまいが印象的だった。

       
【1969年式 トヨタ ハイラックス Vol.1】

 現オーナーが高校生のころ、父親が中古で手に入れたトヨタ・ハイラックス。それからずっと家のクルマとして維持されて、時の移り変わりをずっと眺めてきた。アメリカ人にとって「ピックアップ・トラック」は、特別な価値を持つ。ピカピカに磨かれ、ドレスアップされた個体がある一方、使われっぱなしのまま、長い年月の経過を車体全体で表現している個体もある。今回の取材車両は後者、でもそれはそれで味があるのだ。

先行モデルよりも、乗り心地を意識したフロントダブルウィッシュボーンの足回りなど【写真5枚】

父親が買ったトラック

 今から半世紀前の1960年代には、それまではるか高根の花だった海外旅行が身近になり始め、同じころから、日本のクルマメーカーも盛んに海外市場を目指し始めた。グローバリゼーションという言葉など存在しない時代で、未知の世界への進出は全くの手探りの状態だった。

 69年、ジャンボジェットが初めて世界の空を飛んだ年に日本で生まれたクルマが、海を越え、縁あってカリフォルニアの地にたどりついた。その小さな日本製トラックは、今のこの町に住み着いてすでに42年。アメリカの町並みの変わっていく様子を、かたわらを通り過ぎていくクルマと人の移り変わりと共に、静かに見つめ続けていた。

「私の父親がこの家を建てたのが、今から60年前の54年。そしてこの1969年式トヨタ・トラックは、1972年に私の父が中古で買ったものです」
 ていねいに紹介してくれたデーブ・ジャクソンさんが、この初代トヨタ・ハイラックスのオーナーだ。
「そのころ高校生だった私はちょうど免許を取ったばかりでしたから、父からこのトラックを借りて友達とキャンプへ行ったりしました。荷台で寝たりしてね。もう42年にもなるんですね」

 ジャクソンさんは驚いたように、それでいて懐かしむかのように言った。

 1972年の購入以来、ジャクソン家の生活にとけ込んでいたハイラックスだったが、あるときジャクソンさんは、日々見慣れていて意識もしなかったトラックのある「変化」に気づいたという。

「あれは私が40歳代のころだったか、このトラックがガレージの前に止まったまま、父も乗らずに5年くらいたっていたんです。どうして乗らないのかと父に聞いてみたら『ラジエーターが壊れている』と。それなら直して乗っていいかと聞いたら、いいと言うので、修理して自分で乗るようになりました。その後、父が亡くなったときには処分せずに私がそのまま引き取ったんです」

 現在は不動産会社に勤めるジャクソンさんは、普段の仕事では英国車である2000年式ジャガーをもっぱら使っている。このトヨタ・トラックの出番は、あまりない日常生活だそうだ。





Vol.2、Vol.3に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2014年8月号 Vol.164(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


1969年式 トヨタ ハイラックス (全3記事)

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text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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