長生きでした! 初代サニーのOHVエンジン|日産A型エンジンの進化 Vol.1|日産A型エンジンの血統

初代サニー用として開発されたA型エンジン。

       
【日産A型エンジンの進化 Vol.1 】

シンプルなOHVエンジンを搭載し
愛され続ける歴代サニーの魅力に迫る! 
水冷直列4気筒OHVエンジンを搭載して送り出されたサニーは、
1960年代から80年代の日産を支えたコンパクトファミリーカーだ。
今なお愛され続けるA型エンジンと歴代サニーの魅力に迫ってみた。

初代サニー用として開発されたA型エンジン

 1Lからスタートし、最終的には1.5Lにまで進化した60年代に実用エンジンとして開発されたA型エンジン。OHVという古典的なメカニズムながら重宝され、90年代まで生産された。しかも、その秘めたるポテンシャルの高さは、今でも注目に値する。


60年代後半から四半世紀にわたって傑作エンジンといわれ続けたA型一族。気持ちよいパワーフィールは全エンジンに共通する。


四半世紀にわたって傑作エンジンといわれ続けたA型一族など【写真6枚】


オースチンの流れを汲む、A型の直列4気筒OHV! 


 日産には名機が多い。その多くはDOHCやSOHCだが、OHVエンジンにも秀作がある。今もレース関係者から名機と讃えられている「A型」水冷直列4気筒エンジンだ。誕生したのは、高度経済成長期の真っただ中にあった1966年春である。この年、日産は年収100万円のサラリーマンをターゲットにした、新しいコンセプトのコンパクトセダン、サニー1000を送り出した。その心臓に選ばれたエンジンこそ、A10型直列4気筒OHVだ。

 カムシャフトを使ってプッシュロッドを押し上げ、その動きをロッカーアーム経由で燃焼室頭部のバルブへと伝える。これがOHVと呼ばれるオーバヘッドバルブ式エンジンの仕組みだ。ただし、この方式は高回転になるとバルブの追従性に難があった。その弱点を克服するために考えられたのが、ハイカムシャフトのOHVエンジンだ。シリンダーブロックにあるカムシャフトの位置を高くすることによってプッシュロッドの長さを短く抑え、高回転まで気持ちよく回るようにしている。

 吸排気系のレイアウトはターンフロー、つまり吸気と排気が同一方向のカウンターフローだ。耐久性に優れた鋳鉄のシリンダーブロックを採用し、クランクシャフトは3ベアリング支持とした。A型エンジンを見てもらうと分かるが、その構造や設計手法は提携していたオースチンのミニに積まれているエンジンに似ている。オースチンとの提携を通して得られたノウハウを駆使してA型エンジンは設計されたのだ。

 最初のA10型エンジンのスペックは、ボアが73.0mm、ストロークは59.0mmで、排気量は988ccになり、圧縮比は8.5だ。軽量でコンパクト設計の実用エンジンということで、2バレルのキャブレターを1基装着。最高出力は56 ps/6000rpm、最大トルク7.7kg‐m/3600rpmを発生した。

 後に加わるクーペ用のA10型エンジンでは、圧縮比を9.0に高め、エキゾーストマニホールドをデュアル形状としている。これらのチューニングによって、60ps/8.2kg‐mまで動力性能を向上させていた。

四半世紀にわたって傑作エンジンといわれ続けたA型一族など【写真6枚】



1966年 初代サニー用A10型誕生

新しい価値観を持つコンパクト・ファミリーカーとして登場したサニー1000。まず2ドアセダンがデビューし、続いて4ドアセダンと2ドアクーペが仲間に加わっている。エンジンは988ccのA10型水冷直列4気筒OHVだ。



Vol.2に続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2014年8月号 Vol.164(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

日産A型エンジンの進化 (全2記事)

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text:HIDEAKI KATAOKA/片岡英明 photo:TAKASHI AKAMATSU/赤松 孝

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