現代に蘇った240ZGのグランプリマルーン。魅力的な初代Zのボディカラーのすべて| フェアレディZの気概

240ZGの専用色として設定されたグランプリマルーン。

       
【魅力的なZのボディカラー Vol.1】

ロングノーズ、ショートデッキのフェアレディZのフォルム。
その姿を引き立てているのは、モデルごとに数種類用意されたボディカラーであることは、
Zファンのみならず、誰もが認めるところだろう。その変遷をまとめてみた。

デビュー時は7色で構成

 日本のスポーツカー史に、さん然と輝く足跡を残した傑作車が日産の「フェアレディ」である。その発展版となるフェアレディZは、スポーツカーの歴史を大きく変えた名車だ。その最初の作品となるS30フェアレディZは、北米を中心にヒットを飛ばし、世界から認められた。スポーツカーという特殊なセグメントを身近な存在にし、ビジネスとしても成功した偉大な功労者、それがS30フェアレディZである。

 1960年代まで、スポーツカーはオープンカーが主役だった。高度にチューニングしたハイパフォーマンスエンジンを積み、それに耐えるためにサスペンションを大幅に引き締めている。そのため快適性は二の次だ。スパルタンに達した高性能車、それが当時のスポーツカーだったのである。

 フェアレディZは、高性能なだけでなく快適性を重視した大人のスポーツカーとして登場した。快適にドライブを楽しむために、美しいクローズドボディをまとっている。天気のいい日だけでなく雨の日も運転が楽しい。加えてメカニズムの信頼性も高かったから瞬く間にヒット作となり、アメリカの景色を変えてしまった。

 初代フェアレディZ、S30は1969年11月に産声をあげている。車名にアルファベットの「Z」を加えることで、究極のフェアレディであることを表現した。高剛性のモノコック構造を採用し、その上にかぶせたのはロングノーズ&ショートデッキ、ファストバックの流麗なクーペボディだ。エクステリアだけでなくインテリアも洗練されたデザインとなっている。

 ベースグレードZと上級グレードのZ‐Lが積むのは、セドリックやスカイライン2000GTなどに積まれ、後に名機に列せられるL20型水冷直列6気筒SOHCだ。SUツインキャブを装着したL20型エンジン搭載車は形式「S30」を名乗った。ベースグレードのZは4速MT、Z‐Lはポルシェシンクロの5速MTが標準だ。Zはメーカーオプションで5速MTを選べる。

 フラッグシップのZ432には「PS30」の型式が与えられた。心臓はスカイライン2000GT‐Rから譲り受けた、レーシングエンジン直系のS20型DOHC4バルブだ。トランスミッションは5速MTを組み合わせている。Z432の最高速度は210km/hだった。このZ432にはモータースポーツ用の軽量モデル、Z432‐Rを設定している。PS30の末尾に「SB」のアルファベットが加わる。

 デビュー時のボディカラーは7色、インテリアカラーはブラックだけの設定だ。シルバーグレー、モンテカルロレッド、サンシャインイエロー、サファリゴールドの4色が標準カラーで、オプションカラーとしてキリマンジャロホワイト、レーシンググリーン、ニューサイトオレンジの3色を用意した。Z432‐Rはニューサイトオレンジが基本で、ボンネットを黒っぽいガングレーに塗装している。

 1970年10月に3速オートマチック車とレギュラーガソリン仕様を仲間に加え、1971年3月にはボディ関係に改良を施した。エアアウトレットがテールゲートからクオーターパネルに移されたのもこのときだ。10月には海外で発売しているダットサン240Zを日本向けにアレンジした240Z(HS30)が登場する。エンジンは2393ccのL24型水冷直列6気筒SOHCだ。

人気のグランプリマルーンが登場

 240Zシリーズの頂点に立つのは日本専用モデルとして送り出された240ZGである。ロングノーズを一段と強調したエアロダイナ・ノーズ(通用Gノーズ)を装着し、ヘッドライトカバーやリベット留めのオーバーフェンダーも装備した。トランスミッションは5速MTと3速ATが選べる。

 このときにボディカラーも変更された。ホワイトとシルバー、グリーンが継続となり、レッドは新色グランプリレッドに変えられている。また、ブルーメタリックが加わった。ちなみに劇画の「湾岸ミッドナイト」に登場するミッドナイトブルーは、この色をモチーフにしたもの。そして240ZGの専用色として設定されたのがグランプリマルーンで、他のグレードにはオプションとされた。240ZGは、このマルーンのほか、レッドとホワイトが選べる。

日産自動車創立80周年を祝い登場した、初代フェアレディZのイメージを継承する「The日産ヘリテージカラー」をまとった特別仕様車など【写真6枚】

 1973年9月に商品性改良を行ったが、このときにボディカラーの変更を行った。7色構成となり、新色はシルバーメタリックとライトブルーメタリックだ。その直後に開催された東京モーターショーには2+2レイアウトの260Zを参考出品している。発売が期待されたが、オイルショックによって260Zの国内投入は見送られた。

 1974年1月、2LのL20型水冷直列6気筒エンジンを積んで2by2がデビューする。ボディカラーはブルーメタリック、レッド、グリーンがなくなり、既存色はホワイトとマルーン、シルバーメタリック、ライトブルーメタリックの4色に減らされた。新色として登場したのはブラウンメタリックだ。この色は2by2の専用色となっている。

 1975年9月にはオプションカラーとしてレッドが復活。ホワイトの色味が変わり、グリーンメタリックとダークパープルも登場した。他の2色はブラウンメタリックとシルバーメタリックだ。昭和51年排ガス規制にミートさせた最終のS31とGS31フェアレディZではメタリック塗装を大幅に増やしている。レッド、ホワイト、グリーンメタリック、シルバーメタリックの定番色に加え、ブルーメタリックが再び登場した。また、ベージュとワインのメタリック2色が誕生している。ダークパープルメタリックも残された。

 驚異的な生産台数を誇り、スポーツカーのベンチマークに上りつめたのがS30/S31フェアレディZだ。これ以降、魅力的なボディカラーをまとって、Zが市場をけん引していく。

240ZGのデビュー時に設定された「グランプリマルーン」





鮮やかな赤味が魅力の「グランプリレッド」




写真上が240ZGのデビュー時に設定された「グランプリマルーン」で、下は鮮やかな赤味が魅力の「グランプリレッド」。ともに1973年4月に登場したボディカラーだ(カタログから複写して使用)。



日産リーフ&キューブの特別仕様車、80周年スペシャルカラーリミテッド/TOPICS

 2013年12月に、創立80周年を迎えた日産自動車が、初代フェアレディZのイメージを継承する「The日産ヘリテージカラー」をまとった特別仕様車を販売していた。車種は電気自動車「リーフ」とコンパクトカー「キューブ」。フェアレディZ専用ボディカラーと銘打った「プレミアムディープマルーン」と「プレミアムサンファオレンジ」の2色を用意。このほかにGT-R専用ボディカラーとしてブルーパール、そしてホワイトパールもラインナップされる。さらに専用ブロンズカラーのドアミラーやホイールカバーも装着。フェアレディZのファンにとっては、家族のためのクルマにもZのテイストを取り込める絶好の機会だといえるだろう。





特別仕様車のボディカラーは、日産ヘリテージカラー(当時色)と同一ではないとホームページにもただし書きがある。だが、雰囲気は十分に楽しめるだろう。フェアレディZをイメージした2色は「プレミアムディープマルーン」(上)と「プレミアムサンファオレンジ」(下)だ。


初出:ノスタルジックヒーロー 2014年10月号 Vol.165(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

魅力的なZのボディカラー

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text : HIDEAKI KATAOKA/片岡英明

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