専用パーツとS20型エンジンを組み込んだ特別な Z 1

モータースポーツ用の車両として販売されたフェアレディZ432-R。フロントフードはFRP製に。フロントフェンダーとドアのボディ鋼板は薄いものを使用。フロントウインドーを除くドア、サイド、リアゲートのウインドーには、ガラスに換えてアクリル製のものを使用している。

日産 フェアレディZ432-R


 1980年代以降、自動車メーカーが世界レベルのモータースポーツ参戦のために「ホモロゲーションモデル」と呼ぶ特別仕様車を生産した。そのような中で生産されたのが、フェアレディZにDOHCのS20型エンジンを搭載したZ432-Rである。

フェアレディZ432R リアビュー
FRP製のリアスポイラーは、Z432-Rでは標準装備。マフラーは純正品で、テールパイプが縦に2本突き出た通称「縦デュアル」が付く。


フェアレディZ432R エンブレム
フロントフェンダーからドアの下部に張られた黒いストライプは、69年東京モーターショーの会場に展示した仕様を再現したもの。

クルマ、特に旧車との出合いは、よく人と人との出会いに例えられる。このフェアレディZ432-Rと、オーナーの竹内章さんとの出合いもまた、偶然であったと言える。このZ432-Rを手に入れたことで、竹内さんのその後のカーライフにも、結果的に多大な影響がもたらされることになった。

 この「ヨンサンニ・アール」は、多分、日本で一番有名で、多くの人の目に触れている個体だ。竹内さんは、全国各地のS30Z関連のイベントにも積極的に参加しており、今も年間1万km以上走っているそうで、延べの走行距離は30万km近い(途中でメーター交換している)という。Z仲間のために奔走し、Zのある生活を糧としている竹内さん。だが、このクルマを手にするまでは、Zとのかかわりはまったくと言っていいほどなかったのだ。

 今から31年前の初夏。都内の幹線道路を走っていた竹内さんは、ある中古車販売店の駐車場に、テール側を道路に向けて止めてあった、オレンジ色のフェアレディZを見つけた。気になって冷やかし半分で店を訪ねてみた。

「S30Zであることは間違いありませんでしたが、ボディにエンブレムが付いていなかったので、グレードがすぐには分かりませんでした。でもウインドーをよく見るとアクリル製で、もしかしてこれは『ヨンサンニ・アール』じゃないかと。でも最初は、そんな希少なクルマが目の前にあるとは信じられませんでしたね」

 店の人にクルマの様子を聞いてみると「これは預かり物です」とのこと。「でも売りますから」と言われて、竹内さんは「はい、買います」と即答してしまった。車両価格は、当時の年収を遥かに超える金額だったが、まったく迷いはなかった。結果的に、購入代金を用意するまでに2カ月かかってしまったが、晴れてZ432-Rのオーナーになることができたのだ。

フェアレディZ432-Rタイヤホイール
タイヤは、オーナーの好みにより、バイアス構造の英国ダンロップ製GR65マークⅡを装着。サイズは5.50L-14の表記。サイドウオールが薄いため、ラリー用チューブを入れて組んでいる。ホイールはZ432用のマグネシウム製。



フェアレディZ432-R給油口
公道での仕様を前提としていないために、燃料給油口にはキーが付かない。

フェアレディZ432-R アクリルの日産マーク
アクリル製ウインドーには、日産のマークを示す刻印が付いている。



フェアレディZ432-R サイドエンブレム
初期型では、エアアウトレットがリアゲートウインドーの下側に付くため、リアクオーターパネルにあるエンブレム内には、換気用のスリットがない。

掲載:ノスタルジックヒーロー 2011年10月号 Vol.147(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

photo:Isao Yatsui/谷井功

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