ボロボロのCR-X、空き地に放り出してあったシビック。2台のホンダ車との出合いで、新たな生活が始まる|1975年式 ホンダ・シビック CVCCとCR-X Vol.1|アメリカ発! ニッポン旧車の楽しみ方

トルーさんが「セブンティーファイブ」と呼んでいる、愛車の1975年式シビックCVCC。希望ナンバー制度を使って、まさにそのもの「75 CVCC」を取得した。もう1台の愛車は「レベッカ」と呼ぶ1988年式ホンダCR-Xだ。

       
【1975年式 ホンダ・シビック CVCCとCR-X Vol.1】

ホンダ車の存在を意識した時

 クルマの普及によって生活を便利にするために、と願ったエンジニアたちの努力のかいがあって、昭和30年代の国民車構想は実を結び、町にはマイカーが登場した。今では私たちが旧車と呼ぶクルマの中でも、年代の古いものはこうしてこの世に送り出された。

 日本の高度成長期、生活が豊かになっていく中でクルマが高性能になり、数も増えていくと、その便利さや楽しさとともに出現した「副産物」にも、社会は目を向けざるを得なくなった。工場やクルマの集中した都市部で、深刻な大気汚染が社会を蝕み始めたのだ。

 そのころ、モータリゼーションの先をいくアメリカで、クルマの排ガス規制が始まった。昭和40年代のことだ。アメリカの中でも環境意識の進んだカリフォルニア州では、当初から独自の厳しい排ガス規制を定めた。この「スモッグ」と呼ばれるカリフォルニア州の排ガス規制は日本同様に厳しいもので、日本の民間車検場のように、民間のスモッグ検査場が町中にある。



 そんなスモッグ検査場で検査技師として9年間働くマーチン・トルーさんが8年前に見初めた今の愛車は、偶然にも大気汚染対策の先駆けとなったクルマ、ホンダ・シビックCVCCだ。
「2001年の不景気で職を失い、ローンを払っていたトヨタの新車を手放さなければいけなくなったのが、ホンダを乗るきっかけだったんです」

 と言うトルーさんは、収入は無くなっても生活にクルマは必要だったので、知り合いの親戚が使わずに放り出してあるクルマがあると聞いて、安く譲ってもらった。それが1988年式のホンダCR-Xだった。ボロボロでイヤだなと思いながら、仕方なく乗っていたトルーさんだったが、ある日、理由もなく高速でパトカーに止められた。

非常にシンプルなインパネや、シートカバーを使っているフロントシートなど【写真5枚】

「窓からのぞき込んできた警察官が『このクルマを売ってくれないか。うちの息子がこのモデルを探しているんだ』って言ったんですよ。僕だってかろうじて必要で持っていたクルマですからね、『そりゃ困るよ』と答えました」

 帰宅してCR‐Xのことを調べてみると、初期型はリアサスペンションが後期型とは異なっていて、初期型を探している人が多くいることがわかった。自分のCR‐Xは珍しいクルマだったのか、とトルーさんはホンダ車に対する意識が変わったという。



 意識が変わると、今まで見えなかったものに気づくようになった。ホンダ車に目覚めたトルーさんの目に映ったのが、職場の裏の空き地に放り出してあった、ホンダのマークのついた古いクルマだった。今から8年前の2006年のことだ。それは動かされることもなく雨風にさらされ続け、日増しにボディ表面のサビが濃くなっていく。かわいそうだと思いながらも誰の所有かわからず、トルーさんは憂うだけで、何もなすすべのないまま毎日が過ぎていった。

Vol.2、Vol.3に続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2014年7月号 Vol.163(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ホンダ・シビックCVCCとCR-X(全3記事)

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text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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