時代の最先端の技術、等速ジョイント、センターピボットステアリング方式、インボードタイプブレーキが採用された理由|1968年式 スバル1000 スポーツセダン Vol.2|痛快スポーツモデル

左右のCピラーの下にも専用のエンブレムが装着される。

       
【1968年式 スバル1000 スポーツセダン Vol.2】

Vol.1から続く

航空機等から引き継がれた高い技術を生かした、画期的な機構が盛り込まれた

 富士重工業のバックグラウンドとして受け継がれてきた航空機の設計、製造技術を駆使して生み出されたスバル360が成功を収め、その流れの発展系として開発された小型乗用車が、スバル1000だった。クルマに盛り込まれた機構も、当時の他車とは一線を画した画期的なものが多かった。

搭載されるEA53型水平対向4気筒OHVエンジンはスポーツセダン専用チューンなど【写真7枚】

 まず駆動方式はFF(フロントエンジン・フロントドライブ)を採用。これを実現するためには、ドライブシャフトのハブ側に等速ジョイントを設けることが必須となるが、この難題もベアリングメーカーとともに克服した。エンジンは水冷水平対向4気筒OHVのEA52型を搭載。前後長の短いコンパクトさと低重心を兼ね備えた名機で、シリンダーブロックとヘッド、クランクケースにアルミ合金を使用して、軽量化にも妥協のない設計となっていた。

 さらに足回りの機構にも技術者の魂が込められていた。ステアリングを回した時の操作感がよく、抵抗の少ないセンターピボット方式を採用。これはサスペンションアームの上下キングピンを結ぶ中心線とタイヤの中心線がピタリと一致する設計で、前輪ブレーキをインボードタイプとしたことで実現できたものだ。ここで書ききれないほどのさまざまな新しい機構や設計が盛り込まれたスバル1000は、まさに時代の最先端の乗用車だった。

D E T A I L/時代に認められたFFと水平対向エンジン

 ヨーロッパのクルマで育まれ、1959年、BMCミニの発売が量産車として普及のきっかけとなった前輪駆動車(FF)。
国産量産車では1966年のスバル1000に続き、1967年3月にホンダN360が採用、その後ホンダZ、ライフと受け継がれていった。日産のFF車、チェリーは1970年10月に登場。そして時代の流れはFF車に大きく傾き、軽自動車と小型乗用車の多くに採用され、現在に至っている。

 FFとともに、当初は特殊なパワープラントとしか見られなかったスバルの水冷水平対向4気筒エンジンだが、現在ではスバルの強力なアイデンティティーとして、さらにハイパワーのエンジンとして、世界中で認知されている。



Vol.3に続く

SPECIFICATIONS 主要諸元
1968年式 スバル1000 スポーツセダン(A12)
●全長 3900mm
●全幅 1480mm
●全高 1375mm
●ホイールベース 2420mm
●トレッド前/後 1225/1210mm
●最低地上高 165mm
●室内長 1700mm
●室内幅 1270mm
●室内高 1125mm
●車両重量 705kg
●乗車定員 5名
●最高速度 150km/h
●登坂能力sinθ 0.400
●0→400m加速 17.7秒(2名乗車時)
●最小回転半径 4.8m
●エンジン型式 EA53型
●エンジン種類 水冷水平対向4気筒OHV
●総排気量 977cc
●ボア×ストローク 72×60mm
●圧縮比 10.0:1
●最高出力 67ps/6600rpm
●最大トルク 8.2kg-m/4600rpm
●変速機形式 前進4段・後退1段フルシンクロ
●変速比 1速 3.540/2速 2.235/3速 1.524/4速 1.038/後退 4.100
●最終減速比 4.375
●燃料タンク容量 36L
●ステアリング形式 ラック&ピニオン
●サスペンション前/後 ウイッシュボーン式独立懸架トーションバー/トレーリングアーム式独立懸架トーションバー・コイルスプリング併用
●ブレーキ前/後 ディスク/リーディングトレーリング
●タイヤ前後とも 145-13
●発売当時価格 62万円


初出:ノスタルジックヒーロー 2014年7月号 Vol.163(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1968年式 スバル1000 スポーツセダン(全3記事)

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photo : KAZUHISA MASUDA/益田和久

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