現存していた図面や写真を元に再現。オリジナルが残っていたパーツを装着|1962年式 ホンダ スポーツ360 復刻プロジェクト Vol.2|痛快スポーツモデル

ホンダ スポーツ360復刻プロジェクトの全容を解説した書籍も作られた。

       
【1962年式 ホンダ スポーツ360 Vol.2】

 Honda Collection Hallをもち、自動車メーカーの中でも4輪だけでなく2輪のレーシングマシンも含めた動態保存も積極的に行っているホンダ。そのホンダで2012年夏に始まった、ホンダスポーツ360の復刻プロジェクトを紹介する。

Vol.1より続く

 ボディ造形の決定に際しては、写真や現存していた生産型外形線図とS600の三次元計測データを基にして、1962年ショーに展示したスポーツ360の外形データを制作、再現した。

 S600とスポーツ360とではボディ寸法が異なり、全長が300mm短く(フロントバンパー:56mm、リアバンパー:71mm、ボディ:185mm)、全幅が100mm狭い。全幅はフェンダーの峰を走るモール内側のセンターパネル部分で90mm、外側で10mmの短縮が意匠決定のキモになるが、単純に中央部分だけで狭めるわけにはいかず、流用する内板は複数の個所をわずかずつ切り縮めていった。

市販に向けて走行テストが繰り返されていた時期のスポーツ360。63年3月に栃木県日光の湯元温泉での寒冷地テストの際に撮影された写真など【写真6枚】

 エンジンは現存していなかったため、ほぼ共通であるT360用を搭載することとし、ホンダコレクションホールが収蔵していた修復済みスペアを用いた。両者の最大の相違点はその搭載角度にあり、T360が15度に寝かせているのに対して、スポーツ360では45度に立てている。このためブラケットを新作したうえで、市販されている社外品のマウントを組み合わせ、S600用オイルパンを装着した。この際、搭載角度を変更しても潤滑系および冷却系に問題が生じないことを検証している。



 最高出力はスポーツ360の33psに対して、T360は30psと低いが、エンジンに関する図面がほとんど残っていないため30ps仕様のままとした。また補機類については主に写真を参考にして改造を加えた。キャブレターはT360を用い、吸気マニフォールドは鋳型を起こし、排気系は板金で新作した。

 ラダーフレームの図面は市販型のものが現存していたため、これを用いて板金で新作し、長期の保存に耐えるよう、現代の手法であるカチオン塗装による入念なサビ対策を行った。

 前後のサスペンションパーツはS600用をレストアして用いた。両者ではトレッドが異なり、後輪のチェーン駆動ユニットはチューブ部分を片側19mmずつ短縮して流用し、変速機はS600用を装着した。スチール製ホイールは12×4J(P.C.D:130mm、5穴)という特異な寸法のため新たに製作し、ホイールカバーも存在していた図面を用いて金属で製作した。

 室内装備品ではルームミラー、シフトノブは現存していた図面を用いて新作し、それ以外は写真を精査することで再現していった。バックミラーとステアリングホイールは保存されていたオリジナル品を装着。インストルメントパネルの意匠も写真を検証して忠実に再現した。計器類は量産型スポーツ360用が現存していたので、これを参考にS600用の本体を用いて、盤面を書き換えることで忠実に再現した。配線図面は残っていたが、不鮮明で判読できない部分もあり、S600の配線図面を手掛かりとして再構築した。また、グラブボックスやフィーズボックスの照明灯は、現存していたオリジナル品を装着した。



 シートの意匠は写真から判断し、S600用フレームを短縮して再現した。

 トランクリッド上のSports360のエンブレムとフェンダーミラーは保存品を装着。ボンネット上のバッジは忠実に新作した。

 外装や内装関係の小物類で図面が残っていなかったものは、主に写真から形状を判断して新たに製作したほか、資料が得られなかった場合には、S500/S600用部品のほか、同時代の他車のデザインを参考にしながら違和感のない形状を決定していった。



初出:ノスタルジックヒーロー 2014年7月号 Vol.163(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


1962年式 ホンダ スポーツ360 復刻プロジェクト(全2記事)

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text : KAZUHIKO ITO/伊東和彦 Mobi-curators Labo. photo : Honda Motor Co., Ltd./本田技研工業

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