2012年夏、ホンダスポーツ360の復刻プロジェクトが始まった|1962年式 ホンダ スポーツ360 復刻プロジェクト Vol.1|痛快スポーツモデル

当時の実物は存在せず、資料も完全ではなかったが、現存する僅かな図面や写真、OBの証言などによって復刻を果たした。

       
【1962年式 ホンダ スポーツ360 Vol.1】

 Honda Collection Hallをもち、自動車メーカーの中でも4輪だけでなく2輪のレーシングマシンも含めた動態保存も積極的に行っているホンダ。そのホンダで過去実施された興味深い復刻プロジェクトを紹介する。

 それは2012年夏に始まった、ホンダスポーツ360の復刻プロジェクトだ。

 企画を立案したのはホンダ車の開発を担う本田技術研究所で、試作室が製作を担当、デザインと設計スタッフが連携して計画が進むことになった。

外形線図は残っていなかったが、現存していた生産準備型の図面を基本に、写真などを検証してデザイナーが細部を決定したボディなど【写真5枚】

 大前提となったのは、「メーカー自身が手掛けるからには可能な限り妥協はしない」ことであった。その一方で、新型車開発に多忙を極める試作室の現状を考慮すれば、多くの工数は割くことができず、許容できる範囲の妥協は避けられなかった。もうひとつ、重要な前提となったのは「技術の伝承」、すなわちOBやベテラン社員から、若い技術者たちへ「匠の技」を伝えることであった。



 資料を精査するとスポーツ360には5種が存在していたことが判明した(上記表「スポーツ360の車台形式」参照)。この中から、1962年第9回全日本自動車ショーで公開され、来場者100万人が目にした2XAS250型を復刻することが決まった。



 本田技術研究所の原図室には、市販を前提とした2X改AS250型のボディ外形線図が存在していた。自動車ショー展示車と比較すると、ボディの意匠にわずかな差異が認められたが、これは写真を参考に修正を加えることになった。図面探しと並行して、さまざまな写真やホンダコレク
ションホールが収蔵している各種資料、保存されていたオリジナルパーツ類をリストアップし、開発に携わったOBへの聞き取り調査を実施し、情報を蓄積していった。

 図面の不足と製作時間の短縮を考慮した結果、ボディ内板のほか、前後サスペンションや駆動系などはホンダコレクションホールが収蔵していたS600予備車から得ることとした。

スポーツ360の車台形式



1:TAS260型:1962年6月5日のホンダ会で販売店に公開。赤と銀の2台。
2:XAS260型:詳細は不明。
3:2XAS250型:1962年第9回全日本自動車ショーに展示。銀色。
4:2X改AS250型:量産に向けた開発モデル。
5:3XAS250型:量産間近と思われるモデルだが、詳細は不明。


Vol.2に続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2014年7月号 Vol.163(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1962年式 ホンダ スポーツ360 復刻プロジェクト(全2記事)

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text : KAZUHIKO ITO/伊東和彦 Mobi-curators Labo. photo : Honda Motor Co., Ltd./本田技研工業

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