ステアリング機構によって後輪を操舵する、ホンダ・プレリュード、トヨタ・セリカ、三菱ギャラン等のシステム|後輪転舵編 Vol.3|ハチマル・テクノロジー

ホンダやトヨタのシステムでは、低速時に舵角の大きな逆相モードが設けられていた。

       
【ハチマル・テクノロジー:後輪転舵編 Vol.3】

後輪にもステアリングシステム、目立った効果は小回り性だった

 一方、前輪と同じくステアリング機構によって後輪を操舵するシステムも実用化された。ホンダ・プレリュード、トヨタ・セリカ、三菱ギャランで、制御方式に若干の違いはあるものの、ステアリング機構によって後輪に舵角を与え、低速時の取り回し性や通常走行時の姿勢安定化を図るシステムとして考えられていた。

 基本はやはり同相転舵(旋回時の姿勢安定化)に置かれていたが、ステアリング機構を持つ利点を生かし、ホンダやトヨタのシステムでは、低速時に舵角の大きな逆相モードが設けられていた。小曲率旋回時(たとえば車庫入れ)に、従来の前輪操舵システムより小回りが効くようにしたのである。

 ホイールベースの長い大柄な車両で有効なシステムと考えられていたが、転舵感覚(旋回曲線)が従来の車両と異なり、あまり芳しい評価を得ることはできなかった。

 なお、同相転舵は前後輪同量で舵角90度とすると、横方向へスライドする動きが可能となり、理論上はボディ全長分+αの空きスペースがあれば、縦列駐車が可能になる。こうした例は、近未来志向のコミューター(コンセプトカー)で応用例が示されている。

TOYOTA DUAL MODE 4WS SYSTEM等の解説図など【写真7枚】

TOYOTA DUAL MODE 4WS SYSTEM

トヨタの4WS方式がデュアルモードとネーミングされたのは、低速時には小回り性を向上させる逆相転舵、通常走行時には挙動安定を狙った同相転舵とふたつの異なる動きを持つことに由来する。しかし、低速時の逆相転舵は必ずしも評判のよいものではなかった。






MITSUBISHI 4WS SYSTEM

三菱もギャランで4WS方式を実用化。三菱の場合は4WDとの組み合わせ(ギャランVR-4)によってさらに次元の高い安定性を狙っていた。この考え方は、その後ランサーエボリューションの時代にアクティブヨーコントロール(AYC)として発展・昇華されている。



HONDA 4WS SYSTEM

ホンダの4WSシステムはリアアクスルに設けられたステアリングギアボックスを前輪のステアリングシステムと連動させる構造を採用。ハンドル操作量に応じて逆相転舵(大舵角時)と、同相転舵(小舵角時)を切り替える、ホンダ独自の舵角応動による制御システムを採っていた。




Vol.4に続く


初出:ハチマルヒーロー 2013年2月号 Vol.020(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ハチマル・テクノロジー:後輪転舵編(全4記事)

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text : AKIHIKO OUCHI/大内明彦

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