「初めは完全なオリジナルの状態にまでレストアするつもりだった」ハイチューンのロードスターと共にオートクロスで腕を磨く|ダットサン・ロードスター Vol.3|アメリカ発! ニッポン旧車の楽しみ方

「オートクロスの楽しみは、その当日までコースが分からないこと」というキャンベルさんは、この日行われたソノマ・レースウェイのパドックエリアでの講習会では、インストラクターとして腕前を披露した。

       
【ダットサン・ロードスター Vol.3】

Vol.2より続く

オートクロスで腕を磨く

 「初めは完全なオリジナルの状態にまでレストアするつもりだった」

 というキャンベルさんは、「ところがオートクロスの経験を機に、高いポテンシャルをもっと生かせるように仕上げたいと思い始めたんです」と続けた。

ソノマ・レースウェイのパドックエリアでの講習会で、インストラクターとして腕前を披露したキャンベルさんなど【写真5枚】

 ナパ市の最高級ホテルで設備担当として働くキャンベルさんは、06年に近所の市街地で当て逃げをされた。左フロントのサスペンションに大きなダメージを受けたのを機に、さらにクルマのチューン度を高めた。それからオートクロスに頻繁に参加するようになると、ハイチューンのロードスターと共にその才能を発揮、表彰台の常連となった。

 11年1月のレースライセンス取得の講習会ではオートクロスの経験が生き、実地レースの卒業試験を軒並み上位で修了した。そして直後の4月にマツダレースウェイ・ラグナセカで開催されたクラシックカーレースに出場。その時の様子を、キャンベルさんはこう語った。
「ロードスターがもう1台出場していました。そいつをサーキットで追い回した後、最後の一瞬の隙をついてぶち抜いた時には最高の気分でしたよ」

 総合20位でこの時のレースを終えたのは、公道走行可能な車両での順位としては、かなり良い成績だった。

「サーキットでの経験はまだ浅かったのですが、自分でチューンしたクルマがそこそこ上位に食い込めたので、これでかなり自信がつきました。自転車競技の経験が生きるんです。ダンゴ状態になった中で誰もが先を争っているとき、自分自身をどうポジショニングするか、ということですね」

 と、ロードスターを操るキャンベルさんの言葉には、いつも自信がこもる。

「このクルマは、限界まで引っ張ってやると、そこでいろいろな形でドライバーにシグナルを送ってきます。『それ以上はダメだ』ってね。それを聞き取って操作してやれば、本当に最高のパフォーマンスを発揮してくれますよ」

 生まれながらにして高いポテンシャルを持っていたダットサン・ロードスターは、今でもオリジナルを保つスポーツカーとして、改造を施されたレースカーとして、それぞれの境遇でそれぞれの運命を全うし続けているのだ。

ソノマ・レースウェイの最終コーナーを走るキャンベルさんのロードスターなど【写真5枚】





初出:ノスタルジックヒーロー 2014年4月号 Vol.162(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ダットサン・ロードスター(全3記事)

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text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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