〈2〉2日目の朝から雨が降り出し風も強かった|3つの世界記録と13の国際記録を樹立した トヨタ2000GTスピードトライアル Vol.2

スピードトライアルに挑み 3つの世界記録と13の国際記録を樹立した トヨタ2000GT。

 トヨタ2000GTは耐久性、信頼性を立証するため、66年10月にスピードトライアルに挑んでいる。狙ったのは1万マイル(1万6000km)までの記録更新だ。ステアリングを握ったドライバーは、キャプテンの細谷四方洋を筆頭に、日本グランプリに出場した田村三夫、若手の福沢幸雄、新加入の津々見友彦と鮒子田寛の5人である。

 夜間走行が多いことを考えて大きなスポットランプを組み込み、ボンネットには虫よけ用のレーシングスクリーンが装備された。3M型直列6気筒DOHCエンジンには3基のウエーバーキャブが装着され、最高出力は200ps/7200rpmに引き上げられている。もちろん燃料タンクも増量された。

 2日目の朝から雨が降り出し、台風28号の余波を受け、風も強くなる。完走を目前にしてトラブルにも見舞われたが、72時間の世界記録を塗り変え、その後も走り続けた。シミュレーションテストではトラブル続出だったが、本番では快走して1万マイル走行時に平均速度206.18kmm/hを記録して、3つの世界記録と13のEクラス国際記録を打ち立てている。


 だが、残念ながら栄光のスピードトライアルに使用した実車は残されていない。そこでトヨタ博物館の設立計画が持ち上がったのを機に、展示用にレプリカを製作することになった。監修から陣頭指揮を執ったのは、スピードトライアルに使うマシンの製作にも深くかかわった細谷四方洋だ。

 ベース車は、アメリカでレースをしていたキャロル・シェルビーのところにあったレース仕様のリザーブカーが選ばれた。かなりひどい状態で里帰りしたが、これをスピードトライアル仕様に仕上げている。製作を手がけたのは、トヨタ博物館の展示車両のレストアも手掛けている愛知の新明工業だ。


トヨタ2000GT 外装
 アメリカに送られたレース仕様(MF10)とスピードトライアル車(試作車280AI型)とではボディラインが異なるため、忠実に再現するのは難しい。ドア形状やフェンダーのボリューム、フロントウインカーやリアランプまわりのデザインなど、部分的に異なっているが、仔細にチェックしなければ分からないほど違いはわずかだ。

トヨタ2000GT タイヤ ホイール
 タイヤはグッドイヤーが、特別に当時のブルーストリークを製作。ホイールはシェルビー・レーシングのマグネシウム製で、これも腐食部分を丁寧に処理して塗装をし直している。

トヨタ2000GT 内装
トヨタ2000GT メーター
 インテリアは、ベース車がレース仕様だったことから、これに手を加えて実車に近づけた。量産の2000GTと比べるとスパルタンムードだ。スミス製のメーターやホイヤー製のストップウオッチなど、当時モノへのこだわりが見られる。
リアのラゲッジルームに収められている大容量のガソリンタンクも忠実に再現された。完成度は一級のレプリカといえるだろう。


COOPERATION : TOYOTA AUTOMOBILE MUSEUM/トヨタ博物館


掲載:ノスタルジックヒーロー 2012年6月号 Vol.151(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Hideaki Kataoka/片岡英明 photo:Isao Yatsui/谷井 功

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