スーパーカーに非ず?|1974年式 ランチア ストラトスHFストラダーレ Vol.1

ランチアHFストラトスをスーパーカーの1つと分類することには抵抗を感じている。

       
【1974年式 ランチア ストラトスHFストラダーレ Vol.1】

スーパーカーに非ず? 

 のっけから筆者の私見を述べるようで恐縮だが、ランチアHFストラトスをスーパーカーの1つと分類することには抵抗を感じている。あえて誤解を恐れず言うと、スポーツカーですらないと考えている。ストラトスはラリーでの勝利のためだけに造られた、史上初の車両(パーパスビルドカー)であり、たぐいまれなドライビングプレジャーを有するといえども、それは結果として得られたものに過ぎないと思うのだ。

 ストラトスの起源となったのは、1970年のトリノ・ショーに出品されたベルトーネのデザイン習作、ストラトス「ゼロ」。そしてこのゼロを見て、いち早くラリーマシンとしての将来性を見いだしたランチアのワークスチーム「ランチア・スクアドラ・コルセ」の総監督チェーザレ・フィオリオらの進言によって、コンセプトごとランチア本社に買い上げられ、結局2社により共同で開発されることになった。

 ストラトスの設計・開発は、当時のランチアの技術責任者、ウーゴ・ゴッバートが指揮。実際の設計現場はスポーツ部門の技術責任者で、のちにフェラーリF40も手掛けるニコラ・マテラッツィが担当した。そのほかにもジャンパオロ・ダラーラやマイク・パークスなど、きら星のごとき技術者たちがコンサルタントとして招集された。

 そんなレジェンドたちが開発したHFストラトスは、モノコックのセンターセクションにプレス鋼板製のボックス型サブフレームを組み合わせるという特異なシャシー構造を採用。そこにディーノV型6気筒ユニットをトランスアクスルごと横置きに移植しており、ホイールベースは2180mmに過ぎない。フルモノコックにせず、わざわざサブフレームと組み合わせたのは、ラリー現場でのサービス性を向上させるためとされている。

 またパワーユニットの選択も、このHFストラトス誕生のストーリーにおいては、重要な位置を占めるエピソードである。当初はプロトタイプ「ゼロ」と同様に、ランチア自製のフルヴィアHF用の1・6LのV型4気筒が考えられていたが、シャシーのキャパシティーには依然として十分な余裕があり、またラリーにおける優位性を決定的なものとするためにも、さらなるパワーが要求された。そこでシトロエンSM用マセラティV型6気筒を含む複数のエンジンが候補に挙げられたが、最終的に選ばれたのはフェラーリがディーノ246GT用に設計し、ランチアの親会社フィアットが生産していた65度V型6気筒2418ccのディーノ・エンジンだった。当初エンツォ・フェラーリは渋っていたが、ヌッチオ・ベルトーネが自らエンツォを説得。ようやく供給の約束を取り付けたという。

 そしてFRPのボディ製作は、もちろんカロッツェリア・ベルトーネが担当。同じマルチェッロ・ガンディーニの手による「ゼロ」に比べると遥かに現実的ながら、よりラリーの戦いの現場を見越したデザインへと、抜本的な見直しが図られることになった。




Vol.2、Vol.3に続く

ドリフト状態で走ることの多いラリーマシンのため、ラジエーターの容量およびフロントフードからの抜けも考慮されたデザインなど【写真4枚】

1974年式 ランチア ストラトスHFストラダーレ主要諸元
全長 3710mm
全幅 1750mm
全高 1115mm
ホイールベース 2180mm
トレッド 前1430/後1460mm
車両重量 980kg
エンジン種類 水冷V型6気筒DOHC
ボア×ストローク 92.5×60.0mm
総排気量 2418cc
圧縮比 9.0:1
最高出力 190ps/7000rpm
最大トルク 23.0kg-m/4000rpm
ステアリング ラック&ピニオン
ブレーキ 前後ともベンチレーテッド・ディスク
サスペンション 前ダブルウイッシュボーン/後マクファーソンストラット

初出:ノスタルジックヒーロー 2014年2月号 Vol.161(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1974年式 ランチア ストラトスHFストラダーレ(全3記事)

ストラトス 記事一覧

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text : HIROMI TAKEDA/武田公実 photo : DAIJIRO KORI/郡 大二郎

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