【父の日、黙って用意したプレゼント 2】翌日深夜2時。父のボブさんの家の明かりはすでに消えていた。|1978年式 ダットサン B210 ハッチバック GX Vol.2

B210のカタログや色見本などが、エイジェイさんの自慢のコレクション。当時の北米カタログでは黄色のハニービーも含め、卓越した燃費の良さだけでなく、B210のバリエーションの多さが誇らしげにうたわれていた。

       
シリーズ:父の日、黙って用意したプレゼント

Vol.【1】から続く

【1978年式 ダットサン B210 ハッチバック GX Vol.2】

 時は流れ、目に入る新車のどれにも魅力を感じられなかった今から6年前。それなら思い切って旧車でも探そうかと、ボブさんとエイジェイさんは、どちらからともなく言い出した。

「どんなクルマがいいかな。そうだ、どうせならダットサンを探してみようか!」

 B210を探すとなるとこだわりはある。当時と同じハッチバックのGXグレード、マニュアルシフトがいい。ボディカラーも同じ赤に決まっている。


遠距離のショーに参加するときに使う牽引用の小さいトレーラーが置いてあり、その上には子供のおもちゃが山積みになる自宅のガレージなど【写真14枚】

 最初に見つけた1台はオレゴン州にあった。ところが見に行ってみると、これはボロボロに朽ちていて、ショップに実車を見てもらっても「これはとても直せないね」と、にべもなかった。



 1台目を諦めたエイジェイさんは、さらに探し続けた。そして次に見つけた個体はとても状態が良さそうだった。色こそ赤ではなかったものの、それ以外はほぼそっくり。この2台目を見つけたことを誰にも内証にしたまま、400km離れたサンタマリア市まで買い取りに行くことにして、急いで飛行機に飛び乗った。すでに父の日の当日、父へのプレゼントに間に合うだろうか。

 オーナーに会い、売買交渉を済ませて慌てて帰路についたが、慣れないダットサンの運転では想像以上に時間がかかった。そのため帰り着いたのは翌日の深夜2時。父のボブさんの家の明かりはすでに消えていた。こうして父の日の約束をすっぽかすはめになったものの、このダットサンは1日遅れの素敵なプレゼントになるはずだ。そう願って、クルマを父の家の前に静かに止めて、エイジェイさんは暗闇の中を1人で黙って帰宅したのだった。

Vol.【3】、Vol.【4】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2014年2月号 Vol.161(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1978年式 ダットサン B210 ハッチバック GX記事一覧(全4記事)

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text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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