「会場の使用許可証を見せなさい」ニッポン旧車に魅せられてイベントを開催した人物|1976年式 トヨタ コロナ ワゴン Vol.2

アメリカと地続きの北の隣国カナダから、1000マイル(1600km)もの道のりを2台のシビックで自走してショーに参加した、ジャスティン・マーチさん一家。初代シビックの改造を共通の趣味とするヴォラセインさんの友人だ。「外観をオリジナルのように見せたままで、中身にすごい改造を施す人なんですよ」とヴォラセインさんは言い、マーチさんのシビック改造技術にすっかり傾倒している様子だった。

【1976年式 トヨタ コロナ ワゴン Vol.2】

初めて「大人の集まり」を開催

 ヴォラセインさんの本当の興味は、このシビックを好みのままに改造することにあった。とはいうものの、改造キットが売られているわけでもなく、改造の手本さえまわりには見当たらなかった。
「みんなはどうしているのだろう」
 すぐにそんな疑問に突き当たった。

 インターネットフォーラムで情報収集を始めたが、それではまどろこしくなり、そのフォーラムの仲間でオフ会を開いた。人数は5人。顔を突き合わせて話をするほうが早いし楽しかった。
「そうだ、大きなミーティングを開いてたくさんの人に集まってもらったら、さぞかし楽しいことだろう」
 そう考えたヴォラセインさんだったが、一体ほかに誰を誘ったらいいのか。ホンダ一辺倒だったヴォラセインさんは1人で思案しながら、まずはインテグラ、CRX、と1つずつ車種を広げて、フォーラム上で呼びかけてみた。しかし反応は予想外に鈍かった。ついにはセリカ、ダットサンとホンダ車以外にまで参加枠を広げたが、それでも参加表明は20人を少し超えるに過ぎず、まったくの期待はずれに終わった。

 そんな状況のまま、ミーティングの日がやってきてしまった。開始時間に少し遅れたヴォラセインさんは、会場に到着するなり自分の目を疑った。約束の20台どころか、そこには100台に及ぶ旧車が集まっていた。さらに続々とやってくるクルマは200台を超える勢いだった。このときヴォラセインさんは1つのことを悟ったという。

「フォーラムで反応がなくても、参加してくれた人は大勢いました。潜在的に興味を持っていた人はいたんです」
 感激しながら会場に臨んだヴォラセインさんに、今度は「主催者は一体誰なんだ」と言いながら、警察官が参加者数人に連れられて近寄ってきた。

「会場の使用許可証を見せなさい」

今年4月に予行演習として開催したショーでは、会場設営や駐車場案内、スタッフの配置、それに加えて会場にベンダー(露店商)を入れたりと、運営スタッフにとってはショーの進行を試す機会だった。開場時間に起こる入場の混雑を緩和するためのアイデアや、テントを傾けて直射日光や海風などを遮る工夫なども学んだ。

「許可証なんて持っていません。だって許可がいるなんて知らなかったし、こんなに集まるなんて予想してなかったんです」
 とヴォラセインさんは小声で答えた。

 この場合、普通ならばすぐに強制解散させられる。ところがヴォラセインさんにしてみれば、予想外に集まってくれた顔もまだ見ない仲間たちを、むげに追いやることなどできなかった。ヴォラセインさんは説得にかかった。

「確かに大勢ですが、みんな静かに楽しんでいるでしょう。誰にも迷惑はかけません。そう、これは大人の集まりなんですから」

 それなら今日は勘弁しよう、そう言ってくれた警察官のおかげで、200台に及んだ旧車を整然と並べ、ハプニング続きだったミーティングは、滞りなく終わりを迎えることができた。
「驚いたのは、インテグラのころの仲間とはちょっと違っていたこと。あのころはエンジンを吹かしたり、バーンアウトをしたりしていたんです。でも旧車の人たちは集まってもおしゃべりするだけで、本当に静かでした」

 ヴォラセインさんは自分が初めて主催したミーティングをそう回想した。

Vol.3に続く

映画監督ジョージ・ルーカスの出身地として知られるカリフォルニア州モデスト市にあるヴォラセインさんの自宅ガレージなど【写真4枚】

ニッポン旧車に魅せられてイベントを開催した人物

1976年式 トヨタ コロナ ワゴン記事一覧(全3記事)

初出:ノスタルジックヒーロー 2013年12月号 Vol.160(記事中の内容は掲載当時のもの主とし、一部加筆したものです)

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text & photo:Masui Hisashi/増井久志

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