初代M3が2代目3シリーズをベースとして登場した理由|1989年式 BMW M3 Vol.1|ハチマルレースモデルの超絶技巧

1982年にデビューした2代目3シリーズをベースとしながら、グループAレース参戦用に仕立てられたE30M3(以下:M3)は、ありとあらゆる部分に手が入れられたコンペティションモデル。

       
【1989年式 BMW M3 Vol.1】
 
 BMWとモータースポーツは、古くから深い関わりがある。かつてはF1にもエンジンサプライヤーとして参戦していたほどで、ことツーリングカーに関しては1960年代から世界中のサーキットで主役として活躍。その後のBMWのイメージに“レース”というものを強く植え付けたのである。そんなBMWのなかにあって、グループAレースに参戦するために開発されたのが、E30と呼ばれる初代M3だ。

 1982年にデビューした2代目3シリーズをベースとしながら、グループAレース参戦用に仕立てられたE30M3(以下:M3)は、ありとあらゆる部分に手が入れられたコンペティションモデル。市販車が基本のグループAにターゲットを絞っただけに、エクステリアはエアロパーツはもとより、ワイドなタイヤを装着するためのブリスターフェンダーを装着。さらに、空力を追求してリアウインドーの形状を変更し、それに伴いトランクの形状も改められた。よくあるスポーツモデルの進化版程度ならエアロパーツを追加する程度だろうが、M3ではほとんどの外板パネルが交換されるほど、徹底したモディファイが行われたのだ。

 BMWのグループA制覇の意欲は、エンジンにも表れている。あのBMW・M1用に開発された3.5L直6ユニットから2気筒分をカットオフしたM3専用の2.3L直4ユニットを搭載。当初は最高出力195psだったが、後に215ps仕様や220ps仕様も登場。さらに90年には2.5Lエンジンも搭載し、一段と戦闘力をアップさせた。ミッションはゲトラグ製レーシングパターンの5速MTを採用。ただ、このほかにZF製Hパターンの5速MTも存在し、日本仕様の多くは後者となる。

Vol.2、Vol.3に続く

何年経っても色あせない魅力的なスタイリングなど【写真5枚】

1989年式 BMW M3 (E30) 主要諸元
全長×全幅×全高(mm) 4345×1680×1365
ホイールベース(mm) 2560
トレッド前/後(mm) 1410/1435
車両重量(kg) 1200
エンジン型式 S14型
エンジン種類 水冷直列4気筒DOHC
総排気量(cc) 2302
ボア×ストローク(mm) 93.4×84.0
圧縮比 11.0:1
最高出力(ps/rpm) 210/6750
最大トルク(kg-m/rpm) 24.5/4750
変速比 1速 3.720 / 2速 2.400 / 3速 1.770 / 4速 1.260 / 5速 1.000 / 後退 3.460
最終減速比 3.250
ステアリング ラック&ピニオン式
サスペンション前/後 ストラット/セミトレーリングアーム
ブレーキ前/後 ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤ 205/55R15(前後とも)
発売当時価格 5万8000ドイツマルク(withoutoption)

初出:ハチマルヒーロー vol.19 2012年11月号(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1989年式 BMW M3(全3記事)

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ハチマルレースモデルの超絶技巧

text : Rino Creative/リノクリエイティブ photo:DAIJIRO KORI/郡 大二郎

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