60年代のトヨタが考えた「大衆が楽しむことのできる安価なスポーツカー」|1969年式 トヨタスポーツ800 Vol.1

ヘッドライトリムは下地処理されており、新車時以上の輝きに。

       
【1969年式 トヨタスポーツ800 Vol.1】

 62年の全日本自動車ショーへ出品されたパブリカスポーツは、市販や一般公開を考えていない「実験車」であり、その理由も定かではない。ただ、このショーでの人気がトヨタスポーツ800(通称ヨタハチ)開発のきっかけとなり、65年4月の発売へとつながっている。

 パブリカスポーツは決してスポーツ800のプロトタイプではないが、その存在が大きく影響しているのである。

 一般市民もクルマを持つ時代になりつつあったとはいえ、まだまだ人や荷物を運ぶ「道具」であり、「楽しむ」ものではなかった。もちろんクルマを楽しんでいた裕福な層も存在したが、庶民には現実的ではなかったのだ。そこでトヨタが考えたのが、大衆が楽しむことのできる安価なスポーツカー。それを具現化したのがスポーツ800だった。当時、販売されていた安価な大衆車であるパブリカのエンジンを利用し、車体価格を抑えつつも、モノコックボディを採用し、各部にアルミ材を使用して、車両重量を580kgに抑えることに成功。そのため、非力なエンジンながらも高い動力性能を実現し、このクルマをスポーツカーとして成立させた。

Vol.2、Vol.3へ続く


義務化により69年式からはシートに標準装備として装着されたヘッドレストなど【写真6枚】

1969年式 トヨタスポーツ800

トヨタスポーツ800 記事一覧

1969年式 トヨタスポーツ800(UP15)主要諸元
●全長3610mm●全幅1465mm●全高1175mm●ホイールベース2000mm●トレッド前/後1203/1160mm●最低地上高175mm●室内長785mm●室内幅1250mm●室内高965mm●車両重量580kg●乗車定員2名●登坂能力sinθ0.441●最小回転半径4.3m●エンジン型式2U型●エンジン種類空冷水平対向2気筒OHV●総排気量790cc●ボア×ストローク83.0×73.0mm●圧縮比9.0:1●最高出力45ps/5400rpm●最大トルク6.8kg-m/3800rpm●変速比1速4.200/2速2.400/3速1.550/4速1.125/後退4.333●最終減速比3.300●燃料タンク容量30L●ステアリング形式ウオーム・セクターローラー式●サスペンション前/後ウイッシュボーン・トーションバー/非対称半楕円板ばね●ブレーキ前/後ツーリーディング/リーディングトレーリング●タイヤ前後とも6.00-12-4PR●発売当時価格59万2000円

掲載:ノスタルジックヒーロー 2013年6月号 Vol.157 (記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text :Nostalgic Hero/編集部 photo:MAKOTO INOUE/井上 誠

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