「クルマ好きの独身女? まさかそんな都合の良い話、ある訳ないよな……」|アメリカ発!ニッポン旧車の楽しみ方|3000kmの距離も何のその。クルマとネットが取り持つ縁 Vol.1

新興住宅地に建つ、まだ真新しいチャイルズ夫妻の自宅。「NICOママ」の名前でサイト運営に尽力していた前妻ステーシーさんとの死別直後、グレッグさんは家族の環境を変えようと思い、3人の子供と一緒にこの家へ引っ越した。ガレージの様子を見た近所の人が時々、「クルマが壊れちゃったんだけど直してくれないか」といってくるそうだ。「オレは修理屋じゃないんだけどな」とグレッグさん。

【3000kmの距離も何のその。クルマとネットが取り持つ縁 Vol.1】

 人とクルマとの出合いは、人と人の出会いにつながることがよくある。クルマ趣味の世界もインターネットの普及によって「同好の士」の間のコミュニケーションがとても活発になった。今回のテーマは、クルマのファンサイトを通じて、遠く離れて住んでいた男女が出会った話。簡単に言ってしまうとそれまでなのだが、実はかなりドラマチックだったりするのだ。

 コンピューターもすっかり私たちの日常生活に浸透して、インターネットでのカークラブ活動もあちこちで盛んになっている。週末を待ち遠しく思いながらネットサーフィンをしていれば、時には非日常的な出来事に出くわすこともあるかもしれない。例えば、男と女の出会い。インターネットを通じてダットサンファン同士だった2人が親しくなったという話を紹介しよう。

Zがきっかけとなった出会い

 アリゾナ州と言えば、世界有数の大自然の観光地、グランドキャニオンを擁する内陸地だ。そこから360km離れた州都フェニックス市の郊外、サプライズ市。ここに住む仲むつまじいチャイルズ夫妻は、実はつい数年前まではお互いの存在も知らず、それぞれ遠く離れた場所に住む、2人のダットサンファンに過ぎなかった。それが、ネットでの1通のメールをきっかけに、まさにトントン拍子で結婚まで進んだのだった。
「人と人とのつながり、コミュニティーのパワーを身をもって知ったんです」

 と、ご主人のグレッグさんは言った。

 市役所に職を得た12年前のグレッグさんは、身なり相応にと、それまで愛車にしていた1984年式ホンダCR‐Xの改造車から、95年式インフィニティQ45tに乗り換えた。手をかけていくうち、だんだんとこのクルマの良さに、そして日産そのものの魅力に引き込まれていったという。漠然と旧車好きだったグレッグさんは、「そのうちに日産の旧車をレストアしてみたい」と思うようになっていった。

 時は流れ、2009年1月のこと。アリゾナからは3000kmも離れたテネシー州にいたベッキーさんは、盗難にあったダットサンB210の手がかりを得ようと、ネット検索をしていた。そのときトップでヒットしたのが、グレッグさんの運営していた「オンラインカークラブ」のホームページだった。

 見ているうちにそのコンテンツに興味を持ち始め、「それまではそんなことはしたことなかったの」というベッキーさんは、会員登録をすると、初めてのメッセージを、ホームページ内で見つけた奇妙な色に塗られたレストア中の240Zの持ち主に送ってみた。「いい色のZね。でもそれって、ホンダの純正色じゃない? なんで?」

 新規会員らしき人物からの前触れもない、ちょっと嫌みなメッセージ。カチンときたグレッグさんも、でもそれが女性だとわかると、自問したという。「クルマ好きの独身女? まさかそんな都合の良い話、ある訳ないよな……」


 返信メールがそのうちチャットとなり、そして時の経つのも忘れて朝までコンピューターの前に座り続けたこともしばしば。写真交換もしないままに互いの生活まで明かすようになった2人の心は、次第に打ち解けていった。

 こんなときには運命も味方をするのだろう。グレッグさんにテネシー出張の機会が訪れる。
「いいチャンスだし、会わないか?」

 2人の気持ちが高ぶった。と、今度はその運命がいたずらをする。折からの地方自治体の予算難のために、直前になって出張が中止となる。

Vol.2、Vol.3へ続く

一番新しいコレクション、自慢の63年式P312ダットサン・ブルーバードなど【写真5枚】

3000kmの距離も何のその。クルマとネットが取り持つ縁記事一覧(全3記事)


掲載:ノスタルジックヒーロー 2013年6月号 Vol.157(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text & photo:Masui Hisashi/増井久志

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