「S20型のチューニングは歴史が浅い」ヘッド全損、クランクシャフトは2度も焼き付いたが、挑戦を続け最速を目指す|1969年式 日産 スカイライン 2000 GT-R(PGC10) Vol.4

目指すはFSWをコンスタントに2分4秒台で走るのが目標。

       
【1969年式 日産 スカイライン 2000 GT-R(PGC10) Vol.4】

 2013年、2.5L化を果たした渡辺さんのハコスカ。この時にカムギアトレーンなどを導入し、足回りなども一新。ついに富士スピードウェイで自己ベストとなる2分4秒台のタイムを達成。最速PGC10への階段を一段昇り、この世の春を味わったのもつかの間、S20型エンジンはK3ヘッドの全損、オイルトラブルによるクランクシャフトの焼き付きを2度起こすといったアクシデントを連続して味わうことになった。

 ここまでトラブルが続くと、心が折れてしまったとしても仕方がないとも思われるが、渡辺さんの心はビクともしなかった。それどころかトラブルを糧に、排気量アップやドライサンプ方式と、チューニングの先鞭として、未知の領域に果敢に歩を進めて行く。

「S20型のチューニングは歴史が浅いため、L型チューニングと比べて『コレが正解』といえるものが少ないんです。でも、だからこそやり甲斐があるんです。おもしろいんですよ。エンジン以外にも6速ミッション、ブレーキの強化、ドアやボンネットのFRP化もやっています。今回の排気量アップとドライサンプによってGT‐Rがどう変わるのか、自分でも楽しみです。まずは富士でコンスタントに2分4秒台を出すのが目標ですね」と楽しそうに渡辺さんは語ってくれた。

 誰も挑戦したことがないチューニングに関しては、データーも少なく成功の保証はない。しかも、貴重なS20型エンジンとなれば、なおさら冒険するオーナーは少なくて当たり前だ。

「一生GT‐R。一生S20型エンジン」と覚悟を決めた渡辺さんは、悩み、苦しみながらも挑戦を続けている。その先には、誰も見たことがない景色があると信じて……。



中央にATL製の12ガロン(約45L)入り安全燃料タンクを、その左にコレクタータンクを配置するトランクルーム。


助手席のセンターコンソール寄りの足元を走るホースは、ドライサンプ用のオイルライン。スカベンジングポンプとオイルタンクの往復用、ブローバイ用の3本のラインがバルクヘッドを貫通し、エンジンと繋がっている。


重量バランスを考慮し、純正ではエンジンルームにあるバッテリーを、助手席シート下に移設。乾式のオデッセイ製バッテリーのため、寝かせたレイアウトでも問題ない。


ブレーキはAPレーシングの4ポットキャリパーとφ300mmのベルハウジング別体式ローターの組み合わせ。足回りはアラゴスタ製車高調で、バネレートは9kg/mm。


ドライサンプ用のオイルタンクを、助手席の背後にセット。アメリカのAVIAID製で、容量は3ガロン(約11L)。内部はオイルセパレーター式になっていて、オイルとエアを分離する構造だ。


前人未踏のチューニング領域だけに困難も多いが、渡辺さんのチャレンジは続く。

1969年式 日産スカイライン 2000 GT-R(PGC10)
●エクステリア:リスタード製FRP製ボンネット/フロントフェンダー/前後ドア/トランクリッド
●エンジン:アール・ファクトリーS20型改2.6L仕様(2582cc)/ボアφ85.5mm×ストローク75mm/カムギアトレーン/鍛造ピストン/I断面ロングコンロッド/フルカウンタークランク/スリーブ/300度カム/RB26型用バルブ/ヘッド加工/FJ型用3ステージドライサンプ仕様/ワンオフアルミ削り出しオイルパン、ATIスーパーダンパープーリー、超々ジュラルミン製軽量バックプレート
●吸排気系:ソレックス50PHH、アール・ファクトリーφ42.7mm等長タコ足(6-2)/φ75mmチタンマフラー(出口φ50mmデュアル)
●点火系:和光テクニカル製CDI、マロリー製デスビ、NGK製レーシングプラグ
●冷却系:スギタラジエーター、2連電動ファン、HPI製オイルクーラー
●駆動系:OS技研製ツインプレートクラッチ、ニスモ6速(HPIバージョン)、R200+クスコLSD(ファイナル4.6)、Z31用等速ジョイント
●足回り:前後アラゴスタ製車高調(F:9kg-m/R:20kg-m)、フロントARC製スタビ、ピローボールパイプアーム、リア調整式アーム、ワンオフリアスタビ
●ブレーキ:フロントAPレーシング4ポットキャリパー&φ300mmローター/リアDR30用キャリパー&S12シルビア用ディスク
●タイヤ:(街乗り用)F:ブリヂストン・スニーカー195/50R15、R:アドバンA050 215/50R15(サーキット用)F:アドバンA050 205/50R15/R:215/50R15
●ホイール:RSワタナベ F:15×7J/R:15×8.5J(サーキット用はマグ)
●内装:レカロ製SP-Gフルバケットシート(運転席)、ダッツンコンペステアリング、サイトウロールケージ製6点式ロールケージ、TAKATA製4点式ハーネス(運転席)、ウィランズ製4点式ハーネス(助手席)、大森製タコメーター、亀有製燃圧/油圧/油温/水温計、INNOVATE A/F計、レース用ワイドミラー
●その他:ODYSSEY製乾式バッテリー、ATL製燃料タンク(45L)、コネクタータンク、燃料ポンプ(ニスモ電磁ポンプ、FJ型用、ボッシュ製の3基)、常進技研製アクリルウインドー

初出:ノスタルジックスピード 2014年11月 Vol.005 (記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

助手席のセンターコンソール寄りの足元を走るドライサンプ用のオイルラインなど【写真7枚】

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text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Motosuke Fujii/藤井元輔

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