【ディーラーで販売されたペースカー仕様車】北米最大規模のイベントでも詳細を突き止められない1台|1980年式 セリカ・スープラ・ペースカー・エディション Vol.2

このクルマ最大のポイントであるTRDカラーのサイドストライプ。デザインは本物ペースカーと全く同じ。

       
【1980年式 セリカ・スープラ・ペースカー・エディション Vol.2】

北米市場向けの6気筒搭載クーペという、明らかにダットサン240Zを意識したコンセプトで登場した初代スープラ。その名前も当初は「Z」を意識して、未知数を表すアルファベットの「X」を名前に冠しセリカXXとしたが、アメリカでは「XX」が成人指定映画に関する言葉だったため、北米向けモデルはスープラという独自の名前が与えられた。
 また初代スープラとそのベースとなったA40/50セリカは、トヨタが北米に開設したデザインスタジオCALTYが初めて手掛けた市販車であり、まさにスープラは北米で売るために生まれてきたクルマといっても過言ではない。その後、3世代後の80スープラが映画「ワイルド・スピード」で主役車となるのも、こうした背景があったからこそかもしれない。

 そんなセリカXX、北米ではスープラ・マークIだが取材した車両はすこし変わっていた。
 トヨタが冠スポンサーを務めるロングビーチ・グランプリで、オフィシャルペースカーに使用された個体とほぼ同じカラーリングなのだ。
 しかも、オーナーのラルフ・ロドリゲスさんによれば、「全て買った当時のまま」であり、当時このままの状態で、ペースカー・エディションとしてディーラーで売られていたという、驚きのクルマだった。

 全米中から生粋のトヨタファンが集まるトヨタ・フェスト会場でも、この市販版ペースカーの詳細を知っている人間は皆無で、そのバックグラウンドに関してはいろいろと謎が多い。

 トヨタ・フェスト主催者であり、西海岸で長年日本車旧車業界に携わるkoji山口さんが当時のトヨタ関係者に聞いても、ペースカー・エディションの詳細は不明だった(ロング・ビーチGPで使われた本物のペースカーもすでに処分されているという)。オーナーのラルフがこのクルマを買ったディーラーは、ロング・ビーチから4時間ほど北に離れた場所にあり、同じカリフォルニア州である以外、ロング・ビーチとの関連性も薄い。

 Koji山口さんを始め、アメリカのトヨタファンたちの調査や推測を総合すると、このペースカー・エディションは、カリフォルニアのディーラーがロング・ビーチGPのペースカーのデザインを見て、そこからインスパイアされて独自に製作したディーラー限定車、ということで間違いなさそうだ。恐らく長期在庫化してしまった販売車に付加価値を付けるための、ディーラーの苦肉の策だったのだろう。

 さらにこのペースカー・エディション誕生の背景を探ると、アメリカ車の世界においてこのペースカー仕様というのは定番の存在というのも大きい。アメリカ最大のレース、インディ500では、毎年アメリカ車がペースカーに採用されるのだが、これは非常に名誉なことであり、ペースカーに採用されたクルマが、ペースカーのレプリカモデルを市販することも珍しくない。こうしたインディ500ペースカー仕様のクルマは少数のみが流通し、プレミア化していくので、このスープラを企画したトヨタディーラーも、これを参考にして市販した可能性は高いと思われるのだ。


1980年にこのスープラを新車で購入し、今でも大事にしているラルフさん、レナさん夫妻。他にもビンテージカーを所有するクルマ好きの2人だ。


14インチのアルミホイールは、日本仕様と共通のデザイン。


日本仕様はフェンダーミラーだが、北米仕様はドアミラーとなる。


ハッチゲートのキーホールはロゴのカバーが付く。


日本仕様とは対称的な配置となるインパネ。日差しの強い西海岸にありながら、ダッシュトップに割れも無く、インテリアのコンディションは良好だ。


パワーウインドーにレザー内装と、スペシャリティー度の高い内装。


タコメーターの脇にすぐ吹き出し口が配置された珍しいインパネデザイン。


ミッションの設定は5速MTと4速ATがある。このクルマはアメリカ人オーナーには珍しく5速MT。


前席はさすがにレザーのコンディションが悪いらしく、アメリカっぽいモケットのカバーでシートを保護。


1980年式は、ちょうどモデルチェンジの狭間で、排気量を2.8Lに拡大した5M-E型を搭載するMA47が登場するが、このクルマは2.6Lの4M-E型を搭載するMA46となる。


1980年式 セリカ・スープラ・ペースカー・エディション(MA46)主要諸元
●全長4600mm
●全幅1650mm
●全高1310mm
●ホイールベース2630mm
●トレッド前後とも1365mm
●最低地上高160mm
●室内長1645mm
●室内幅1360mm
●室内高1075mm
●車両重量1190kg
●乗車定員5名
●登坂能力tanθ0.61
●最小回転半径5.3m
●エンジン型式4M-EU型
●エンジン種類水冷直列6気筒SOHC
●総排気量2563cc
●ボア×ストローク80.0×85.0mm
●圧縮比8.5:1
●最高出力140ps/5400rpm
●最大トルク21.5kg-m/3600rpm
●変速比1速3.287/2速2.043/3速1.394/4速1.000/5速0.853/後退3.657
●最終減速比4.039
●燃料タンク容量61L
●ステアリング形式ボールナット式(パワーステアリング)
●サスペンション前/後ストラット式コイルスプリング/4リンクラテラルロッド式コイルスプリング
●ブレーキ前後ともディスク
●タイヤ前後とも185/70HR14
●発売当時価格190.9万円(データはセリカXXのもの)

掲載:ノスタルジックヒーロー 2013年6月号 Vol.157(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

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text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Hirano Akio/平野 陽

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