「せっかく手に入れたクルマなんだから最後までやり遂げろ」と発破をかけたのは、かつて憧れたクルマに乗りたかった父親|1972年式 トヨタスプリンタートレノ Vol.Vol.2

仕上がってからまだ4カ月。雨天は乗らないし、タイヤハウス内も非常にキレイ。でも、飾るのではなくチョイ乗りにも使う実用車だ。

       
【1972年式 トヨタスプリンタートレノ Vol.2】

稀少な前期TE27トレノのオーナーである堀米拓郎さんはランサーエボⅥに乗っていたある日、違和感が湧いた。

どんなに走り込んでもクルマに乗せられているような感覚……。

こうじゃない、もっと楽しく乗りたいという気持ちを覚えたという。

 そんな時に思い出したのが自動車専門学校で教材として触れたTE27トレノ。もともと旧車への憧れもあったため乗りたい気持ちは急激に膨らんだ。

 そこで当時の恩師である木内先生に譲ってもらえないかと交渉。当初、譲るつもりはなかったようだが「堀米くんになら」ということで快く譲ってくれたのだった。

 こうして手元に来たTE27トレノだが、レストア教材だったため、当然バラバラで、まずは組み立てから始めることとなった。この作業には友人であり、プロのメカニックでもあるT’sコーポレーションの黒岩社長が参加。心強い助っ人となった。

 しかし、思いのほか手間がかかる。そうこうしている間に堀米さんの就職も決まり、時間的な余裕がなくなったため、作業は一時中断されたのだった。

 1972年式のみに設定されたボディ色であるバレンシアオレンジが鮮やかだ。
TE27というとモスグリーンのイメージが強いが、オレンジも「TE27らしい」印象を持っている。

 写真のとおりキレイに仕上がっていて、ふだん乗りも難なくこなしているTE27トレノだが、ここまで仕上げるのには約2年が経過していた。

 そのほとんどの期間、復活作業は中断していたのだが、正直なところ、大きな環境の変化で疲れており、レストアへ気持ちが向かなかったことが大きかったという。

 ここで気合を入れてくれた人がいた。堀米さんの父親である。

 父親もクルマ好きで、若い頃に憧れていたのが実はTE27トレノ。その憧れのクルマを息子が持ってきた、しかもレストアして乗るという状況。父親にとってうれしくないわけがない。

 だが、楽しみにしていた息子のレストア作業がしばらく止まったままとなり、気が気ではなくなり、「せっかく手に入れたクルマなんだから最後までやり遂げろ」とハッパをかけた。

 父親の後押しを受けて堀米さんは動き出した。

Vol.3、Vol.4へ続く


室内はほぼオリジナル。ダッシュボードやドア内張り、天井もキレイ。稀少な純正ステアリングも状態が良い。


2T-G型改1.75L仕様だが、カムやバルブはなぜかノーマル。エンジンは今後、手直しする予定。


排気量が上がっているのでエキマニはワンオフで作り直し。こちらもビンテージカーヨシノ製作で材質はステンレス。


マフラーはビンテージカーヨシノ製作のワンオフ。音量は控えめだが、吸気音とあわせて気持ちいい音を奏でる。

1972年式 トヨタスプリンタートレノ 主要諸元
●全長3945mm
●全幅1595mm
●全高1335mm
●ホイールベース2335mm
●トレッド前/後1270/1295mm
●車重855kg
●乗車定員5名
●エンジン型式2T-G型
●排気量1588cc
●圧縮比9.8:1
●ボア×ストローク85×70mm
●燃料供給ミツバ電磁ポンプ
●気化器ソレックス40φ×2+スポーツエアクリーナー
●排気系ワンオフEXマニ+ワンオフマフラー
●出力115ps/6400rpm
●最大トルク14.5kg-m/5200rpm
●サスペンション型式前/後マクファーソンストラット・コイルスプリング/半楕円リーフリジッド
●ブレーキ前/後ディスク/リーディングトレーリング
●タイヤ/ホイール ケンダ185/60-13/RSワタナベ13インチ

ノスタルジックヒーロー 2013年2月号 Vol.156(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

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text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Masayuki Fukada/深田昌之

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