当時の国産車には無かった大胆なデザインで注目を集めたコルトのスポーティーなモデル｜1968年式 三菱 コルト1000F 2ドアDX　Vol.2

【1968年式 三菱 コルト1000F 2ドアDX　Vol.2】

特徴的なデザインと水冷2サイクル直列3気筒、トランスミッションはコラムシフトとコラムシフトの4速ATを組み合わせた三菱コルト800はセンセーションをもって迎えられたが、4サイクルエンジンを好む保守層に敬遠され、販売は伸び悩んだ。
そこで1966年9月に、4ドアセダンのコルト1000と同じ977ccのEK43型直列4気筒OHVエンジンを積んだコルト1000Fを発売している。エクステリアとインテリアはコルト800と同じだが、エンブレムなどが新しくなっている。

　ハイカムシャフトのEK43型直列4気筒エンジンは55ps／6000rpm、7.5kg‐m／3800rpmを発生した。最高速度はコルト800の120km／hから135km／hに引き上げられている。1967年5月にはインテリアを中心に改良を行った。インパネをソフトパッドで覆い、2眼の円形メーターを採用している。右側がスピードメーター、左側は燃料計などを並べたコンビネーションメーターだ。

　その7カ月後の1967年12月、第3のドアとも言えるハッチゲートを装備し、利便性を高めた3ドアセダンを仲間に加えた。荷物を出し入れしやすいし、リアシートには3段階のリクライニング機構が組み込まれ、畳むと広い荷室スペースが出現する。

　1968年8月、乗降性を向上させるために後席用ドアを加えた4ドアモデルを発売した。また、硬派のコルト1100Fスポーツも送り出している。デザイン史に一石を投じ、ラリーなどでも高い実力を見せた水島製作所の意欲作、それがコルト1000Fだ。

　レアもののコルト1000Fを所有する木口隆司さんは、特に旧車ファンであったわけではない。懇意にしていたオークラオートサービスに、たまたま入ってきたコルト1000Fを見たときに父親が乗っていたクルマを思い出し、思わず買ってしまった。「実際にこのクルマかどうか記憶が定かではないのですが……」と木口さん。だが、このような珍しいリア形状をしているクルマは何台も存在しない。きっと子供の頃の記憶を呼び覚ましたのだろう。

　このコルト1000Fは一生大切に乗り、自分が乗れなくなった時には息子さんへと引き継ぐという。


マニアから「ケンカワイパー」と呼ばれる、両側に開いて拭き取る方式のワイパー。


フロントドアには、開閉して風量を調節できる三角窓が備わっている。ガラスに貼られたデカールも当時のまま残されていた。


シングルキャブ仕様だが、55ps／7.5kg-mにパワーアップされた977ccのEK43型直列4気筒OHVエンジン。


エアクリーナーの下から覗いている湯たんぽ状のものはラジエーターのサブタンク。標準搭載されていたもの。


右側が140km/h表示のスピードメーター、左側は水温計と燃料計をセットしたコンビネーションメーターだ。


広々感のある水平基調のダッシュボードを採用し、細身のステアリングは優雅な2本スポークとした。フロアシフトのほか、コラムシフトの4速マニュアルも設定する。


フロントシートはセパレートシートだ。が、コラムシフトもあったのでベンチシートも用意されていた。まだヘッドレストは装備されていない。


ガラスエリアが広く、ファストバックだから頭上にも十分な空間が残されている。ルーミーで気分よく座れる3人掛けのリアシート。


1968年式 三菱 コルト1000F 2ドアDX　主要諸元
●全長3650mm
●全幅1450mm
●全高1390mm
●ホイールベース2200mm
●トレッド前/後1220/1185mm
●最低地上高165mm
●室内長1620mm
●室内幅1260mm
●室内高1140mm
●車両重量745kg
●乗車定員5名
●登坂能力sinθ0.414
●最小回転半径4.5m
●エンジン型式EK43型
●エンジン種類水冷直列4気筒OHV
●総排気量977cc
●ボア×ストローク72×60mm
●圧縮比8.5:1
●最高出力55ps/6000rpm
●最大トルク7.5㎏-m/3800rpm
●変速比1速3.787/2速2.379/3速1.535/4速1.000/後退5.385
●燃料タンク容量40L
●ステアリング形式ボールナット
●サスペンション前/後横置半楕円板バネ式/半対称半楕円板バネ式
●ブレーキ前/後油圧内部拡張式ツーリーディング/リーディングトレーリング
●タイヤ前後とも6.00-12 4PR
●発売当時価格45.5万円

ノスタルジックヒーロー 2013年2月号 Vol.156（記事中の内容はすべて掲載当時のものです）