サイドガラスは上ヒンジ! 日本初のファストバックスタイルは三菱の水島製作所が作ったこの車|1968年式 三菱 コルト1000F 2ドアDX Vol.1

個性的なフォルムのコルト1000。左側のリアクオーターピラーには、ガソリンの給油口が設けられている。

       
1968年式 三菱 コルト1000F 2ドアDX Vol.1

オート三輪の分野で名を知られ、1960年代には軽自動車のミニカや三菱360バンなどを手掛けたのが、三菱の水島製作所である。技術レベルの高さに定評があった水島製作所は、1965年11月に個性的なフォルムのファミリーカーを市販に移した。日本で初めてクーペ風のファストバックスタイルをまとい、サイドウインドーにカーブドガラスを採用して新鮮な感覚を打ち出したコルト800だ。

 そのネーミングから分かるように、コルト600の事実上の後継モデルである。独立したトランクを備えているが、平凡なシルエットになることを嫌い、ルーフエンドからリアガラス、トランクまでを一直線につないだ。また、リアエンドのパネル面をえぐり、スポーティームードを高めた。ヨーロッパでも採用例がほとんどなかったファストバックを、時代に先駆けて採用したことは卓見と言えるだろう。

 デビュー時は2ドアモデルだけの設定だった。フロントシートはベンチシートとセパレートシートが用意されている。エンジンもユニークだ。リードバルブを採用した843ccの水冷2サイクル直列3気筒で、トランスミッションはコラムシフトとコラムシフトの4速ATを組み合わせた。

 コルト800はセンセーションをもって迎えられたが、4サイクルエンジンを好む保守層に敬遠され、販売は伸び悩んだ。そこで1966年9月に、4ドアセダンのコルト1000と同じ977ccのEK43型直列4気筒OHVエンジンを積んだコルト1000Fを発売している。エクステリアとインテリアはコルト800と同じだが、エンブレムなどが新しくなっていた。


保護すべき個性的な特徴を持つコルト1000。


当時の国産車としては例のない大胆なファストバックスタイルを採用して注目を集めた。この時代、ヨーロッパでもファストバックを採用するセダンはほとんどない。


サイドガラスの開閉はフリップ式。上を支点にして下側が開いて換気する構造となっていた。また、時代に先駆けて採用したカーブドガラスの湾曲が、この写真から見て取れる。


タイヤはコルト800と同じ6.00-12-4PRが標準だったが、1968年のマイナーチェンジを機に13インチタイヤが登場する。


トランクは施錠用のキーを解除して開ける。メッキのバンパーもエレガントだ。バンパー下からはフィニッシャー付きの小柄なマフラーが顔を出す。


ファストバックの面より外側に伸びたリアフェンダーには「テールフィン」の名残がある。丸型リアコンビネーションランプともども「コルト」のアイデンティティーだ。


トランクリッドには新車のときに購入したと思われる『岡山三菱』のステッカーが貼られている。


シングルキャブ仕様だが、55ps/7.5kg-mにパワーアップされた977ccのEK43型直列4気筒OHVエンジン。

1968年式 三菱 コルト1000F 2ドアDX 主要諸元
●全長3650mm
●全幅1450mm
●全高1390mm
●ホイールベース2200mm
●トレッド前/後1220/1185mm
●最低地上高165mm
●室内長1620mm
●室内幅1260mm
●室内高1140mm
●車両重量745kg
●乗車定員5名
●登坂能力sinθ0.414
●最小回転半径4.5m
●エンジン型式EK43型
●エンジン種類水冷直列4気筒OHV
●総排気量977cc
●ボア×ストローク72×60mm
●圧縮比8.5:1
●最高出力55ps/6000rpm
●最大トルク7.5kg-m/3800rpm
●変速比1速3.787/2速2.379/3速1.535/4速1.000/後退5.385
●燃料タンク容量40L
●ステアリング形式ボールナット
●サスペンション前/後横置半楕円板バネ式/半対称半楕円板バネ式
●ブレーキ前/後油圧内部拡張式ツーリーディング/リーディングトレーリング
●タイヤ前後とも6.00-12 4PR
●発売当時価格45.5万円

ノスタルジックヒーロー 2013年2月号 Vol.156(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

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text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Ryotarow Shimizu/清水良太郎

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