新品同様の状態で車庫に保管されていた貴重なハードトップ｜1972年式 ダイハツ フェローMAX HT TL　Vol.2

用途を「遊び」に特化し、ポップなカタログやポスターで新しい購買層を取り込もうと考えたダイハツのフェローMAX。
その戦略はあたり、当時独走していたホンダN360を抑えて販売トップに躍り出た。

　この勢いのまま1971年8月に登場したのが軽自動車初のハードトップモデルであり、今回取材した車両だ。
ツインキャブのGXLとSL、シングルキャブのGL、TLをラインナップ。洗練されたフロント部でありながら、先代フェローのシルエットを残していたセダンに対し、全く別のクルマと思えるほどのリアビューに変わった。

　1972年のフェローMAXは年間生産台数で14万台を記録。しかし翌73年の軽自動車車検制度の施行によって軽自動車の売り上げは一気に落ち込み、フェローMAXも生産台数が50%減に。1976年にはハードトップがラインナップから外されてくる。550ccエンジン搭載車も登場したが、売り上げ回復は望めず、生産中止となった。

　オーナーの福井利治さんは、ミニカやR2、ホンダZ、ライフなど軽自動車を中心に旧車を数多く所有する。もちろん旧車イベントにも参加し、横のネットワークが豊富だ。そんな彼に旧車仲間から相談があったのは2004年のこと。娘に買い与えたフェローだったが全く乗らないので譲りたいとの申し入れがあったのだ。しかも聞いてみると非常にレアなハードトップ。一も二もなく購入を決めた。

　乗っていなかった上に、車庫保管されていた車体は新車同然の状態。しかも一度オールペイントしていたため、とてもキレイな状態だった。

　エンジンも調子良く、イベントの帰りについ100km／h巡航したところ、途中でエンジンが焼き付いてしまった。しかし、レストアが趣味の福井さんにとっては喜ぶべきハプニング。すぐにエンジン修理を楽しんだという。

　実際、ヤレたクルマを手に入れてはレストアし、大切に乗ってくれそうな旧車好きに譲るという福井さん。まさに、保護指定旧車乗りにふさわしい人物といえるだろう。


遊べる軽自動車フェローMAX。


鉄製ホイールは3.5D×10インチ。純正のメッキホイールキャップを装着。タイヤはヨコハマラジアルGTスペシャルで145/80R10。


軽自動車初のハードトップ。2ボックス型のセダンに対し、ハードトップは流れるようなサイドビューが特徴。


ピラーの存在しないハードトップモデル。リアサイドウインドーのガーニッシュが当時の流行を感じさせる。


1973年頃までの登録されたクルマに付けられた「点火時期調整」ステッカーが当時のままの状態で貼られている。


サイドステップは泥がつきやすく、水はけも悪いので、錆対策のために自分でアルミ板を加工して製作。ドアを開けた際シャープに見せる効果もある福井さん自慢のパーツだ。


純正のシートは当時のままだがすり切れることなくキレイな状態を保つ。レースのカバーは当時の雰囲気を出すため古いカーテンを利用して製作。


ドアの内側上部には新車時に貼られているエンジン始動の仕方など、マニュアルが書かれたステッカーもそのまま残されていた。


後期型から丸形に変更されたメーター類。ダッシュパネルには上からラジオ、ヒーターコントロールとシガーライター。一番下のMAXの文字が入った板はオプションのオーディオが入る取り付け部分をふさぐフタ。

1972年式 フェローMAX HT TL　主要諸元
●全長2995mm
●全幅1295mm
●全高1255mm
●ホイールベース2090mm
●トレッド前後とも1120mm
●最低地上高170mm
●室内長1455mm
●室内幅1140mm
●室内高1050mm
●車両重量495kg
●乗車定員4名
●登坂能力Tanθ0.35
●最小回転半径4.2m
●エンジン型式ZM型
●エンジン種類水冷2サイクル直列2気筒
●総排気量356cc
●ボア×ストローク62×59mm
●圧縮比10.0:1
●最高出力33ps/6500rpm
●最大トルク3.7kg-m/5500rpm
●変速比1速4.727/2速2.823/3速1.809/4速1.269/後退4.865
●減速比4.450
●燃料タンク容量26L
●ステアリング形式ラックピニオン
●サスペンション前/後マクファーソンストラットコイル／セミトレーリングアームコイル
●ブレーキ前後ともリーディングトレーリング
●タイヤ前後とも5.20-10 4PR
●発売当時価格42.3万円

ノスタルジックヒーロー 2013年2月号 Vol.156（記事中の内容はすべて掲載当時のものです）

全ての画像を見る

72年式 ダイハツ フェローMAX HT TL記事一覧（全2記事）

関連記事：フェロー記事一覧