70年代、ホンダNを抑えて販売トップにも! それでもハードトップは希少車|1972年式 ダイハツ フェローMAX HT TL Vol.1

1972年のフェローMAXは年間生産台数で14万台を記録した。

       
かつてダイハツが販売したフェローMAXは現在でも通用するスタイリッシュなデザインのクルマだ。

 軽商用車で実績を上げていたダイハツが軽乗用車分野の進出を目標に定め開発したのが、1966年に発売開始となった初代フェロー。ヴィニャーレがデザインしたコンパーノバンやダイハツスポーツの流れをくむ、シンプルで洗練されたボディラインが特徴的なクルマだった。そのスタイリングをさらに洗練させるとともに、FR駆動から室内空間を確保しやすいFF駆動へと変更。エンジン出力は当時のハイパワー競争に呼応するように23ps/5000rpmから33ps/6500rpmとアップ。各パーツの見直しも行われ、約30kgもの軽量化に成功したのが1970年に発売開始となったフェローMAX。

 出力アップや軽量化だけではなく、販売イメージ戦略も大きく変更。1970年という発売年は1947〜49年の爆発的な人口増が起こった第1次ベビーブーム世代(団塊の世代)が社会人になり始める頃。用途を「遊び」に特化し、ポップなカタログやポスターで新しい購買層を取り込もうと考えたクルマだ。

 1970年4月に発売され、3カ月単位でモデルチェンジを繰り返し、1970年7月にはSSグレードをラインナップ。最高出力40ps/7200rpmというスポーツエンジンを搭載した。さらに、1970年10月には装備を充実させたハイカスタム・スポーツを発売し、当時独走していたホンダN(Ⅲ)360を抑えて販売トップに躍り出た。

 この勢いのまま1971年8月に登場したのが軽自動車初のハードトップモデルだ。ツインキャブのGXLとSL、シングルキャブのGL、TLをラインナップ。洗練されたフロント部でありながら、先代フェローのシルエットを残していたセダンに対し、全く別のクルマと思えるほどのリアビューに変わった。


ダイハツのエンブレムの隣にはイベントのプレート。


この個体のグレードはTL。エンブレムはどれも綺麗に維持されている。


マフラーエンドはデュアルキャブ装着モデルが2本出し。このクルマを含むシングルキャブ装着モデルが1本出しとなっている。


ダイハツのプレート。


オーナーはエンジン整備は自分で行うが、キャブオーバーホール、ウオーターポンプ交換、エンジンブロックのホーニング加工は業者に任せるという。


ラジエーターの容量アップにペットボトルで作った自作のキャッチタンク。意外に効果があるという。


エアクリーナーには取り込み調整弁が付いており、季節によって使い分ける。調整レバーのところの夏冬の文字は「いつも間違えるから自分で書いた」とオーナー。

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後付けのオーディオ以外はノーマルの状態を保つコクピット。ステアリングのカバーは自分で製作した革製のもの。


フロアマットは当時の純正品。リアシート用も揃っている。

72年式 フェローMAX HT TL 主要諸元
●全長2995mm
●全幅1295mm
●全高1255mm
●ホイールベース2090mm
●トレッド前後とも1120mm
●最低地上高170mm
●室内長1455mm
●室内幅1140mm
●室内高1050mm
●車両重量495kg
●乗車定員4名
●登坂能力Tanθ0.35
●最小回転半径4.2m
●エンジン型式ZM型
●エンジン種類水冷2サイクル直列2気筒
●総排気量356cc
●ボア×ストローク62×59mm
●圧縮比10.0:1
●最高出力33ps/6500rpm
●最大トルク3.7kg-m/5500rpm
●変速比1速4.727/2速2.823/3速1.809/4速1.269/後退4.865
●減速比4.450
●燃料タンク容量26L
●ステアリング形式ラックピニオン
●サスペンション前/後マクファーソンストラットコイル/セミトレーリングアームコイル
●ブレーキ前後ともリーディングトレーリング
●タイヤ前後とも5.20-10 4PR
●発売当時価格42.3万円

ノスタルジックヒーロー 2013年2月号 Vol.156(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

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text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Kazuhisa Masuda/益田和久

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