日本の高度経済成長期を支えた車の一つであるブルーバードが誕生した翌年の1960年4月。
トヨタのコロナは初めてのモデルチェンジを断行した。その3カ月後、第2世代のコロナラインもベールを脱いだ。野暮ったかったエクステリアは躍動感あふれる洗練されたデザインに変わっている。キャビンは広く、ラゲッジルームは荷物を積みやすい。先代と同じように2ドアにテールゲートのバン(PT26V)も用意された。
そして9月30日、小型トラックのコロナライン・ピックアップが発表され、その日から発売を開始する。
これは500kg積みの小型トラックだ。バンのルーフを縮め、その後ろを広くて荷物をたくさん積めるフラットな荷台とした。乗車定員はバンの5名(積載時は2名)に対し2名としている。
エンジンは初代コロナラインの後期モデルから採用された997ccのP型直列4気筒OHVだ。パワースペックはコロナと変わらない。圧縮比は7.5で、最高出力は45ps/5000rpm、最大トルクは7.0kg‐m/3200rpmと発表されている。トランスミッションは2速以上にシンクロを備えた3速MTで、コラムシフトだった。最高速度は100km/hだ。
サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン/コイル、リアは耐久性に優れたプログレッシブタイプのリーフスプリングを採用した。ちなみにセダンのリアは、1枚リーフとコイルスプリングのカンチレバー式だ。足まわりだけでなく、シャシーなども補強している。実用本位の商用車でありながら、機能美にこだわり続けたのがコロナライン・ピックアップだ。
オーナーである河村智教さんは一桁ナンバーだが車検切れだったこのクルマを何とか登録しようと奔走。元の所有者の家族と連絡をとり、事情を説明し、無事名義変更することができた。
そんな河村さんは、商用車、しかも変わったクルマの収集家。しかもレストアされたキレイなクルマよりも時代の年輪を感じさせる多少くたびれたクルマが好きだと言う。
まさにコロナラインは河村さんの好みに一致する類いまれなクルマなのだ。
ボンネットの左前にはセダンと同じようにしゃれた筆記体で書かれた「CORONA」のエンブレムが付く。今の日本車にはない、繊細なレタリングが魅力。
荷台にはパイプで作った鳥居を装備。リアガラスを保護するガードバーは前オーナーが装着。長物の荷物などが積載可能。
中央から左右に開き、また中央に集まる「ケンカ型」ワイパーを採用。
リアゲートはパネル面にあるオープナーを回して開ける。写真で分かるように、リアゲートは下側を支点にしてアオリが後方に開く。
リアバンパーの中央を窪ませ、そこにペットネームの「TOYOPET」のバラ文字を入れた。随所に、こういったセンスのよさが見られる。
本来は排気量997㏄のP型エンジンを搭載しているのだが、前オーナーがパワー不足解消に、ほぼ外観寸法の変わらない1198㏄のP2型エンジンへと載せ替えている。
リアサスペンションは、大きな荷重に対してタフな半楕円リーフスプリングのリジッドアクスルに変更された。
購入時マフラーには穴が開いており、修復し、マフラーカッターを装着。リーフスプリングは堅めに調整し直したため、車高が少し上がっている。
オーディオの下に見えるのはヒーターの操作系スイッチやチョークレバー、ステッキ式のサイドブレーキだ。
シートはビニールレザーで、3速のコラムシフトのためベンチシートとなっている。当時はヘッドレストやシートベルトの発想もなかった。
1961年式 トヨペットコロナライン 主要諸元●全長4100mm
●全幅1490mm
●全高1490mm
●ホイールベース2400mm
●荷台長1540mm
●荷台幅1490mm
●荷台高420mm
●トレッド前後とも1230mm
●最低地上高175mm
●車両重量1000kg
●乗車定員2名
●登坂能力sinθ0.24
●最小回転半径5.2m
●エンジン型式P型
●エンジン種類直列4気筒頭上弁式
●総排気量997cc
●ボア×ストローク69.9×65mm
●圧縮比7.5:1
●最高出力45ps/5000rpm
●最大トルク7.0㎏-m/3200rpm
●変速比1速3.647/2速1.807/3速1.000/後退4.863/減速比5.571
●燃料タンク容量40L
●ステアリング形式ウォーム、セクター・ローラー式
●サスペンション前/後独立懸架トーションバーバネ/半楕円非対称プログレッシブ板バネ
●ブレーキ前/後ツーリーディング式/デュオサーボ式
●タイヤ前後とも5.50-13 6PLT
●発売当時価格49.9万円
ノスタルジックヒーロー 2013年2月号 Vol.156(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)
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