67年、世界に衝撃を与えた一戦! 「緑の地獄」ニュルブルクリンク500kmを制す|1966年式 ホンダ S800 Vol.2

オールアルミ製水冷直列4気筒2バルブDOHCエンジン。791ccの排気量で、最高出力70ps/8000rpm、最大トルク6.7㎏-m/6000rpmを発揮した。

       
【1966年式 ホンダ S800 Vol.2】

実質的なホンダ最初の4輪車であるSシリーズ。それはF1参戦のために編成されたスタッフが「片手間」に開発した市販車といってもいい。

 彼ら技術者にとって市販車はダウングレードされたレースカーであり、惜しみない技術の投入はぜいたくではなく、このような手法しかできなかったというべき。しかもほとんどの技術者がバイク開発上がりだったため、その技術が数多く投入されているのだ。

 ホンダSのレストアを専門的に手掛ける「ガレージイワサ」社長の岩佐三世志さんは「Sはレース屋がその技術を惜しみなく投入して造ったクルマ。しかも初めて造るクルマなんだからエンジンはおろかボディやシャシー、各パーツに至るまですべていちから開発している。普通の市販車と比べられるようなものではなかった」と言う。

 そんな特別なクルマだからこそ、日本グランプリなど国内のレースだけでなくニュルブルクリンク500kmなど海外のレースも制し、世界に衝撃を与えることとなった。いやむしろ国外にこそ大きな衝撃だっただろう。


 何度乗ってもホンダS800のダイレクトな加速は強烈だ。そして、軽くアクセルを踏み込むだけで一気に回転数を上昇させるエンジンは、最新のクルマでは決して味わえないくらい高く、心地よい音を奏でる。


バンパー下にスペアタイヤリッドが見えないのがチェーンドライブの特徴。また、リアランプの形状がS800とS600を区別するポイント。


S800の特徴であるパワーバルジ。実際には必要なかったという説もあるが、振動によるクリアランスや空気の流れを作る意味では大きい。


ホイールの穴が5つとなっているのは、チェーンドライブ仕様の純正ホイールのみ。


当時の社長、本田宗一郎はクルマメーカーとなるための打ち上げ花火と称してF1への参戦を表明した。

1966年式 ホンダS800 主要諸元
●全長3335mm
●全幅1400mm
●全高1200mm
●ホイールベース2000mm
●最低地上高160mm
●車両重量720kg
●乗車定員2名
●登坂能力20.8°
●最小回転半径4.4m
●エンジン型式AS800E型
●エンジン種類水冷直列4気筒DOHC
●総排気量791cc
●ボア×ストローク60.0×70.0mm
●圧縮比9.2:1
●最高出力70ps/8000rpm
●最大トルク6.7㎏-m/6000rpm
●燃料タンク容量35L
●ステアリング形式ラック&ピニオン
●サスペンション前/後トーションバー式ウイッシュボーン独立懸架/コイルバネ式トレーリングアーム独立懸架
●ブレーキ前後とも油圧式リーディングトレーリングシュー形式
●タイヤ前後とも6.15-13-4PR
●発売当時価格65万8000円

掲載:ノスタルジックヒーロー 2012年12月号 Vol.154(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

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text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Motosuke Fujii/藤井元輔

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