1万rpmまで回るエンジン! 60年代、2輪グランプリレースを席巻したホンダが放ったスポーツカー!|1966年式 ホンダ S800 Vol.1

S800の特徴であるパワーバルジは、実際には必要なかったという説もあるが、振動によるクリアランスや空気の流れを作る意味では存在意義がある。

       
【1966年式 ホンダ S800 Vol.1】

何度乗ってもホンダS800のダイレクトな加速は強烈だ。そして、軽くアクセルを踏み込むだけで一気に回転数を上昇させるエンジンは、最新のクルマでは決して味わえないくらい高く、心地よい音を奏でる。

 この性能を可能としたのは、ホンダが誇る職人の技。S800のオールアルミ製DOHCエンジンには、当時の2輪のグランプリを席巻していたホンダGPマシンの技術がふんだんに取り入れられていた。

 代表的なところでは組み立て式クランクシャフトと、それを支持するニードルローラーベアリング。そして吸気系としては京浜製の4連CVキャブレターを採用し、排気系ではバイクのように美しい曲線の4‐4‐2式マフラーがおごられた。これが8000〜1万rpmまで回る高回転を実現する動力性能を支えた。

 そもそも実質的なホンダ最初の4輪車であるSシリーズは、クルマを量産する技術者が作ったものではない。当時の社長である故本田宗一郎さんは、クルマメーカーとなるための打ち上げ花火と称してF1への参戦を表明。
もちろんこの手法はバイクで世界進出する際に打ち上げた「マン島レース参戦」と同じ。

 ホンダ社内ではマン島ほどのインパクトは無かったものの、グランプリレースを席巻中のホンダに恐怖を感じていた欧州では大変な話題となった。当時イギリスのクルマ雑誌には、実際には全く何も存在していなかったホンダF1マシンの完成予想図まで掲載されたほどだったのだ。




バルクヘッドに付くプレートには、車台番号AS280、機関番号AS280Eと記載されている。


チェーンドライブ搭載車は車台番号がAS800-1000026〜100752まで。写真の車台、機関番号の末尾は画像修正してあります。


京浜製CVキャブレターには30Bの刻印がある。30はベンチュリー径が30mmであることを示す。S500〜600は26mm。公害対策で改良し続けたためA〜FとJの7種類あり、JはS800Mに装着された加速ポンプ付きだ。


ペダル類は全体的に右側へとオフセットされているが、実際に踏み間違えるようなことはない。シフトレバーの操作性は良好で、ダイレクトな加速を楽しむことができる。



インテリアはSシリーズを通してほとんど変化はない。クローズドでも意外に室内は広い。



1966年式 ホンダS800 主要諸元
●全長3335mm
●全幅1400mm
●全高1200mm
●ホイールベース2000mm
●最低地上高160mm
●車両重量720kg
●乗車定員2名
●登坂能力20.8°
●最小回転半径4.4m
●エンジン型式AS800E型
●エンジン種類水冷直列4気筒DOHC
●総排気量791cc
●ボア×ストローク60.0×70.0mm
●圧縮比9.2:1
●最高出力70ps/8000rpm
●最大トルク6.7kg-m/6000rpm
●燃料タンク容量35L
●ステアリング形式ラック&ピニオン
●サスペンション前/後トーションバー式ウイッシュボーン独立懸架/コイルバネ式トレーリングアーム独立懸架
●ブレーキ前後とも油圧式リーディングトレーリングシュー形式
●タイヤ前後とも6.15-13-4PR
●発売当時価格65万8000円

掲載:ノスタルジックヒーロー 2012年12月号 Vol.154(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

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text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Motosuke Fujii/藤井元輔

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