第2回日本グランプリで優勝の S4グロリア・レース仕様をレストア開始 Vol.1

日産自動車開発部門の社員とその関連会社の社員が集まり、会社の休日に活動している「日産名車再生クラブ」。
今年の再生車両となったのは、鈴鹿サーキットのレースに出場したプリンス自動車工業のグロリアスーパー6のレース仕様だ。

関連記事:第2回日本グランプリで優勝の S4グロリア・レース仕様をレストア開始 Vol.2


日産 グロリア 外装
 本誌読者の中で、日産、プリンスファンの皆さんがきっと楽しみにしている企画が、今年もスタートした。

 2019年5月29日、神奈川県厚木市にある日産自動車テクニカルセンター内において、「日産名車再生クラブ、キックオフ式」が行われた。2006年4月に発足したこのクラブでは、日産ヘリテージコレクションに所蔵されている歴史的な車両を、当時の状態で動態保存することを目的としている。古いクルマを再生していく過程で、会社の先輩たちのクルマ造りの考え方や技術的な工夫などを学んでいくのだ。過去に14台のヘリテージカーを再生、昨年はB110サニークーペGX‐5 TS仕様をレストアして、12月に開催されたニスモフェスティバルでお披露目されたのは、本誌でも紹介した。

 そして今年の再生車両として選ばれたのは、1964(昭和39)年5月に開催された第2回日本グランプリのT‐Ⅳレースで優勝した、大石秀夫選手のプリンス・グロリアスーパー6、39号車だった。62年9月にフルモデルチェンジを受けて2代目となるS40系グロリアが登場。翌63年6月に2Lクラスとして国産初となる水冷直列6気筒SOHCのG7型エンジンを搭載したスーパー6を追加。当時のプリンス自動車工業のテクノロジー・フラッグシップと呼べるクルマであり、それをベースにレースカーに仕立てられた。

 国産量産車としては初めての100psオーバーとなる105psのスペックを誇ったG7型エンジンだったが、レース仕様ではエンジン型式がGR7A型とされている。このあたりの改修内容については、キックオフの段階では不明で、今後エンジンを分解した段階で実際の様子が明らかにされるはずだ。また、駆動系にかんしては、レース仕様ではリアのド・ディオンアクスルにノンスリップデフが装着されていたようだが、これらの仕様についても完了時の発表を待ちたい。

 一方、レストアで一番目を引く外装、内装について見ていこう。ボディカラーのブルーは、同じ第2回日本グランプリで鮮烈なデビューを果たしたS54A‐1スカイラインGTと一緒であり、この色調が生かされるはず。カーナンバーとゼッケンは、現状ではペイントによる仕上げとなっているが、過去の再生車両の例から、カラーシートでの再現となるかもしれない。

 量産車をベースにレース仕様に仕立てた当時のツーリングカーの場合、前後の座席を取り外すことができない車両規定となっていることも多かった。それに沿った車両造りが見られるのも興味深い。前席にはセパレートシートが2座装着されているが、その下にはもともとのベンチシートのベースフレームがそのまま残っている。またメーターパネルとインストルメントパネルもベース車のままのようで、スカイラインGTのような後付けのタコメーターも装着されていなかった。

 再生車両は例年、12月に開催されるニスモフェスティバルで完成披露となるのだが、せっかくならばデビューの地、鈴鹿サーキットで里帰りランをさせたい、という話をゲストが提案。そうなると11月16〜17日に開催される鈴鹿サウンド・オブ・エンジンまでに車両を完成させなければならなくなる。名車再生クラブのメンバーの頑張りが試されることになったが、果たして実現できるのか。楽しみに待ちたい。

日産名車再生クラブ グロリア

掲載:ノスタルジックヒーロー 2019年8月号 Vol.194(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text & photo:Yoshimi Takayama/高山佳巳 cooperation:日産自動車、日産名車再生クラブ

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