日本車なの!? リトラでガルウイング全高980mm。エンジンはL型6気筒縦置き!|幻の和製スーパーカー 童夢 零 Vol.1

ウエッジシェイプのスタイルにガルウイング(シザース)ドアの「零」

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1970年代半ば、漫画週刊誌に掲載された「サーキットの狼」が引き金となり、スーパーカーブームが巻き起こった。カーマニアの目を奪ったのはレーシングカーのようにエンジンをドライバーの背後に置くミッドシップ方式のスポーツカーだ。

 人々は、精緻なマルチシリンダーのDOHCエンジンをミッドシップに積んだフェラーリやランボルギーニ、マセラティなどのイタリア製エキゾチックスポーツにため息を漏らした。

またパワフルさを全身で誇示したポルシェ930ターボや優美なロータスにも熱いまなざしを向けている。

が、この時代、日本にはスーパーカーと呼べるクルマが存在しなかった。



 当時、日本の自動車メーカーは排ガス規制を乗り切るのだけで精いっぱいで、オイルショックも到来したため大っぴらにスポーツカーの開発を宣言できない。


 そんな時、突如、和製スーパーカーが産声をあげたのである。製作したのはレーシングコンストラクターの童夢で、車名は「零(ゼロ)」だ。


 発表されたのは日本ではない。二度目のオイルショックの余韻が残る78年2月のジュネーブショーの会場だ。日本製スーパーカーの展示に、会場は騒然となった。


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美しさにこだわるイタリア製スーパーカーよりも斬新なデザインを採用し、海外のクルマ好きを驚かせた童夢 零。ボディ素材にはFRPが採用された。


童夢エンブレム
童夢のエンブレム


 注目のエンジンは、日本製にこだわった結果、日産を代表する2.8リットルのL28型直列6気筒SOHCを選んでいる。

これをミッドシップに搭載。エンジンルームにはタワーバーを装着し、剛性を高めた。ドアの後方にはエンジン冷却用のインテークを設けている。

ブレーキはガーリング製のディスクで、前輪はベンチレーテッドディスクだ。タイヤは前輪が13インチ、後輪は14インチの前後異サイズとした。

インパネにはデジタルメーターを組み込み、本革ステアリングもV字型スポークのユニークなデザインだ。背が低いため、キャビンはタイトだった。

童夢-零エンジン

リアカウルを持ち上げると、ラゲージスペース、その奥にエンジンが現れる。

日産のL28型直列6気筒SOHCユニットは、ソレックス44PHH×3を装着。緑色のタワーバーを配し、剛性を確保する手法がとられている。


童夢-零キャビン

シートは薄手のバケットタイプで、デザイン優先だった。

童夢-零タイヤとホイール

零専用の童夢オリジナル・デザインのホイールを装着。タイヤは前後が異なるサイズを採用。フロントは細めの185/70VR13、リアは225/55VR14サイズのピレリP6を履く。


掲載:ノスタルジックヒーロー 2011年6月号Vol.145(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

photo:Isao Yatsui/谷井功 text:Hideaki Kataoka/片岡英明 cooperated:DOME

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