板前修業に集中するために、きっぱりクルマを封印。それから30年|1973年式 日産 チェリークーペ 1200 X-1・R Vol.2

X-1・Rでは革巻き仕様の2本スポークのステアリングが標準装備。ホーンボタンのデザインがハコスカGT-Rと同じで、色違いだ。ダッシュボードの形状は、左右でシンメトリックになっているのが特徴的。

       
日産初のFFモデルチェリーはデビューレースでワン・ツーフィニッシュを飾るなどサーキットで活躍した。

 そんなサーキットで走るチェリーのイメージを、市販モデルに反映したスポーツバージョンが1973年3月に登場した「X‐1・R」だ。

 X-1とスペック的には同等だが、スカイラインGT‐Rと同様に、太いタイヤを収めるためのオーバーフェンダーを前後に装着し、足回りも強化。「R」の名にふさわしいホットモデルとなっていた。

 ここで紹介する1973年式X‐1・Rは、宮城県の色川秀行さん所有の前期モデルだ。色川さんは、20歳の頃にハコスカに乗っていたりしたが、板前修業に集中するために、きっぱりクルマを封印。

 その後、50歳を目前に、仕事も安定し、子供も手がかからなくなったのをきっかけに、憧れていたチェリーの乗ってみようと思い立った。ところが、旧車の情報は旧車雑誌ノスタルジックヒーローを読むくらいで、交流は全くない。
 そこで、「ニューイヤーミーティング」に出かけて、チェリーのクラブを探してみることにしたそうだ。

 お台場の会場では、運命の出会いが待っていた。チェリーに関しては日本一といわれる広島の「竹口自動車」の竹口英三代表と知り合うことができ、話しはトントン拍子で進むことになる。

 竹口さんの知り合いの鹿児島のオーナーからドンガラのX‐1・Rを譲り受け、竹口自動車でフルレストアを行うことになった。そして竹口さんの手により仕上げられた車両こそ、今回の取材車両なのだ。


Vol.3に続く


センターコンソールの2カ所の丸いスペースを生かし(もともとはカバーされている)、水温計と燃圧計を追加。



1973年3月〜10月の10カ月間のみ販売された前期型のX-1・R。1973年10月〜74年9月まで販売された後期型とでは、フロントグリルのデザインをはじめ、バンパーのスモールランプが無しと有り、バンパーの曲がり込み具合が小さいと大きい、リアシートのウインドーの開かないのと少し開くといった、マイナーチェンジに伴う相違点がいくつかある。また、X-1・Rの最大の特徴であるオーバーフェンダーは、カタログでは「ソフトガード」と記されている。確かに、GT-Rなどと比べると、柔らかい素材で出来ていて、塗装面がすぐに割れてしまうという弱点もある。


リアビューを強烈に印象付けるリアコンビネーションランプ。


走行テストを行った結果、純正SUキャブは、エアクリーナーを装着したほうが調子が良かったらしい。ただし、4速7000rpmくらいから、燃料が足りない症状が出るとか。


竹口自動車のステンレス製タコ足&マフラーを装着。心地よい排気音とレスポンスアップを実現。



リアゲートのヒンジが、ルーフの表側に装着される斬新なデザイン。


掲載:ノスタルジックヒーロー 2012年12月号 Vol.154(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

全ての画像を見る

73年式 日産 チェリークーペ 1200 X-1・R 記事一覧(全3記事)

関連記事:チェリー記事一覧

text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Ryotarow Shimizu/清水良太郎

RECOMMENDED

RELATED

RANKING