瀟洒なカブリオレのシュコダが「鉄のカーテン」の向こう側からやってきた時代 3

意外なほどに骨太な本格派スポーツカー

 歴代ヒーレー・スプライトとMGミジェットは、合わせて「スプリジェット」なるニックネームとともに、世界中のエンスーから愛されてきた名作。その開祖に当たる「カニ目」ことオースチン・ヒーレー・スプライトには、今回の取材に際してずいぶん久しぶりに乗ったのだが、やはり以前と変わらぬ魅力的なスポーツカーだった。

エンジン

エンジン

 日産A型にも絶大な影響を与えたとされるBMCの名機Aタイプエンジンは948ccで、おとなしいチューン。こと速さのみを問うならば、現代のスポーツカーはもちろんのこと、同じユニットを共用するミニ・クーパーSや後のMGミジェットよりも遥かに劣る。またレスポンスやサウンドなどのフィールも、実に長閑なものである。でも、ハンドリングは動力性能と相反するようにクイックで、可愛いスタイルや長閑なエンジンフィールから受けるイメージほどには「癒やし系」でない。

 ホイールベース2030mm、車両重量640kg(ともにメーカー公表値)というスペックから想像されるように、「カニ目」はスポーツカーの真骨頂とも言うべきハンドリングの持ち主。「カチカチッ!」と決まるシフトレバーを操りつつ走らせていると、心底愉快な気分になってくるのだ。
「スプライト(Sprite)」の意味を英和辞典でひも解いてみると、「息」を意味するラテン語から派生した言葉で「霊や精神」などを意味するという。
 しかし近代以降においては「妖精」という意味合いで使われる機会も多くなっているとのこと。このクルマにつけられた「スプライト」も、おそらく妖精を意味するものだろう。
 でもたとえ可愛らしいスタイルであろうとも、このクルマの本質は「可憐な妖精」というよりは、もっと骨太な本格的スポーツカー。そしてこの後に登場する後進たちに、多大な影響を及ぼした歴史的傑作車なのである。

コーションプレート

SPECIFICATIONS

1961 SKODA Felicia

全長×全幅×全高(mm) 不明
車両重量(kg) 895
エンジン種類 4気筒OHV
総排気量(cc) 1089cc
最高出力(ps/rpm) 50/5500
最大トルク(kg-m/rpm) 不明
変速機 4速MT
燃料タンク(L) 不明
サスペンション前 ダブルウィッシュボーン
サスペンション後 トーションバー
ブレーキ形式 ドラム(前後とも)
タイヤサイズ 155R15(現状装着タイヤ)

涌井ミュージアム ロールスロイス

涌井ミュージアム 外観

涌井ミュージアム 地図

ノスタルジックヒーロー 2017年4月号 Vol.180(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Hiromi Takeda/武田公実 photo:Daijiro Kori/郡 大二郎

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