瀟洒なカブリオレのシュコダが「鉄のカーテン」の向こう側からやってきた時代 2

1961 SKODA Felicia

日本国内で半世紀以上の時を刻んできたフェリツィア


 今回ご案内するシュコダ・フェリツィアは、61年生産と推定される一台。識者に伺ったところによると、シュコダは当時ロールス・ロイス/ベントレー、ローバーを扱っていた朝日自動車が代理権を獲得し、1台のオクタビアと3台のフェリツィアが日本に輸入された。フェリツィアには120万円の値付けが行われたとされている。

インパネ

ステアリング

 しかし、新車当時から日本に存在するこの個体が、在日チェコスロバキア社会主義共和国大使館の関係者が所有していたもの、と伝えられていることから、朝日自動車の輸入した3台のうちの1台であるのか、あるいは大使館ルートで独自に持ち込まれた車両かは、今となっては不明となっている。

フロントシート

リアシート

 それでも、80年代末ごろには豊島区某所のパーキングの屋根付きスペースに止められているところが目撃されているほか、わずか数年前にも埼玉県のさる中古車ディーラーで販売されるなど、日本国内で長らく実際に使用され続けてきた車両であることは間違いないようである。

 現時点でもボディ内外装に一定の経年劣化は見られるものの、機関部のコンディションは絶好調。撮影のために走らせてみると、同時代のドイツ車などと比べてしまうと古さも感じるが、例えば英国のモーリス・マイナーやイタリアのフィアット1100あたりとは遜色のない走りを見せる。

 かつての自動車先進国、旧チェコスロバキアが、50年代には依然として第一線のテクノロジーを保っていたことを証明する一台。そして新車当時から日本国内で歴史を刻み、今なおシングルナンバーが維持されたこのシュコダは、間違いなく後世に残すべき歴史遺産と言えるのである。

トランク

ノスタルジックヒーロー 2017年4月号 Vol.180(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Hiromi Takeda/武田公実 photo:Daijiro Kori/郡 大二郎

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