「わが国初の大型車発売」と謳われた直列6気筒OHV搭載の特別なセダン|63年式 日産 セドリック・スペシャル Vol.1

       
日本のモータリゼーションのきっかけは、外国で設計されたクルマの部品を輸入して組み立てるという、ノックダウン方式から始まった。

日産は英国オースチン社と技術提携して、1953年からA40サマーセット・サルーンの組み立てを開始。ノックダウン生産の最初のモデルとなる。翌年、モデルチェンジでA50ケンブリッジ・サルーンとなり、日産はこの2つのモデルの生産を通じて、輸入部品を国産部品に置き換えながら、乗用車生産のノウハウを習得していった。

 この後、自社開発の中型乗用車として60年4月に誕生したのが、セドリックだった。英国の子ども向け小説「小公子」の主人公、セドリック・ロエルに由来する車名は、日産の基幹車種として長く使われることになる。

 当初は1.5L、G型エンジン搭載モデルのみだったが、7カ月後に1.9L、H型エンジン搭載車を追加し、こちらがメイングレードとなる。初期型は縦置き丸形4灯ヘッドライトを持つ独特の表情だったが、1962年10月のマイナーチェンジで横置き丸形4灯に変更された。

 この初代セドリックが順調に販売を伸ばしていた頃、日産はさらに高いグレードのクルマをセドリックをベースに開発していた。62年10月に東京・晴海で開催された第9回全日本自動車ショーで展示され、63年2月に発売されたのがこのセドリック・スペシャルなのだ。

「わが国初の大型車発売」。当時の雑誌広告でうたわれ、運転手付きで乗る企業のトップたちにぜひ導入してもらいたいと、日産が熱きメッセージを送っていた。

そのためカタログには「わが国初の6気筒エンジン」「広く豪華な西欧風サロン」「3段フルシンクロ採用」など、時代の最先端の機構や装備が並んでいたのである。


取材車両はレストア車両だ。レストアをしたのはヴィンテージ宮田自動車。
細心の注意を払って仕上げられた全塗装済みのボディ。ひずみ抜き、下地塗装、本塗装を経て、乾燥後に鏡面仕上げを施している。


天然木を使ったインパネが高級感を漂わす。ただしこの仕様はスペシャル中期型からのもので、初期型は丸形2連メーターだった。助手席前には、つり下げタイプのエアコンを装着。


取材車両はコラムシフトの3速マニュアル。「フリー・ドライブ」と呼ぶ自動変速機はオプションだ。


外観も含めてオーバーホールされた、2.8L K型水冷直列6気筒OHVエンジンには、NISSAN2800のバッジが誇らしげに付く。



フェンダーに着くエンブレム。


トランクリッドに誇らしげに付く排気量。


63年式 日産 セドリック スペシャル 主要諸元
●全長4855mm
●全幅1690mm
●全高1495mm
●ホイールベース2835mm
●トレッド前/後1354/1373mm
●最低地上高190mm
●車両重量1400kg
●乗車定員6名
●登坂能力sinθ0.408
●最小回転半径6.2m
●エンジン型式K型
●エンジン種類水冷直列6気筒OHV
●総排気量2825cc
●ボア×ストローク85×83mm
●圧縮比8.7:1
●最高出力115ps/4400rpm
●最大トルク21kg-m/2400rpm
●燃料タンク容量44L
●変速機形式前進3段後退1段フルオートマチック
●ステアリング形式ウォームローラ
●サスペンション前/後ダブルウイッシュボーン・コイル/リーフ・リジッド
●ブレーキ前/後ユニサーボ/デュオサーボ
●タイヤ前後とも6.40-14,4P
●発売当時価格138万円

掲載:ノスタルジックヒーロー 2012年10月号 Vol.153(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

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text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Kazuhisa Masuda/益田和久

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