特別な称号「GT」。日本におけるGTはいつ登場したの?|ジャパニーズGTカーの誇り Vol.1

市販第1号はいすゞ自動車のベレット1600GT。

       
クルマ好きが憧れる『GT』という名称は、英語で「GRAND TOURING(グランド・ツーリング)」の頭文字を取ったものである。イタリア語では「グラン・ツーリスモ」だ。自動車の世界では、長い距離を速く、しかも快適に移動できることを目的に開発されたスポーツモデルを「GT」と定義付けている。高性能エンジンを積んでいるだけでなく、ハンドリングやフットワークなど、走りの性能においても卓越した実力を求めた。

 日本に「GT」を名乗るクルマが誕生するのは64年だ。最初に名乗ったのは、プリンス自動車のスカイラインである。第2回日本グランプリに出場するため、限定販売の形でスカイラインGTを送り出した。ヨーロッパの「GT」は2ドアクーペがほとんどだ。が、日本は4ドアセダンに、初めての「GT」の栄誉を与えている。

 マスコミに発表したのは3月14日だったが、正式発売はグランプリ直前の5月1日だ。日本で初めて「GT」を名乗ったのはスカイラインGTだが、市販第1号はいすゞ自動車のベレット1600GTとなっている。発表は遅かったが、スカイラインGTよりひと足早く、4月に発売に移された。ちなみに、いすゞは正式発表する前の63年秋の第10回全日本自動車ショーにベレット1500GTを参考出品している。これを発展させ、量産に移したのがベレット1600GTだ。

 65年、スカイラインGTは量産態勢を整えたのを機に「スカイライン2000GT」と改名した。ベレットと同じように「GT」の前に排気量の数字を加え、多くの人に分かりやすい表現としたのだ。そしてシングルキャブの「2000GT‐A」を送り出したのを機に、ウエーバーキャブを3連装した元祖のほうは「2000GT-B」と呼ばれるようになる。このS54シリーズ以降、スカイラインは6気筒エンジンを積むクルマだけが「GT」を名乗り、現在まで伝統として残った。



プリンスが第2回日本グランプリに出場するため限定販売したスカイラインGT。日本で初めてGTを名乗った。



コロナのボディにDOHCエンジンを搭載した1600GT。トヨタ内部でのGTの定義が確立された1台となった。


掲載:ノスタルジックヒーロー 2012年6月号 Vol.151(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

全ての画像を見る

ジャパニーズGTカーの誇り 連載記事一覧

text : Hideki Kataoka/片岡英明

RECOMMENDED

RELATED

RANKING