これが「丸テール」の原点か!? 2代目スカイライン、採用されなかったデザイン|C10スカイラインのデザイン秘話公開 Vol.2

       
2代目のスカイラインになるはずだったEZSP(E型1.2Lエンジンを積む計画でEという名称にしたが、エンジンは計画のみ)と呼ばれるクルマのデザインを森が担当した。その後、AZSP(FG4A型1.5LエンジンのAを名称に使用)も計画された。デザイナーとしての信念に基づいて、丸形2灯でグリルレス(バンパーの上に細長いグリルはあるが)と丸形リアランプのクルマをデザインした。これがスカイラインの丸形テールランプの原点と言われている。

 EZSP&AZSPデザインは森、山脇、八木沼、鈴木潔の4人が競った。5分の1のモデルでは森の案が残った。しかし、プリンス経営陣の石橋正二郎会長から「スタイルがシンプル過ぎる」と却下された。試作の2号車まで出来上がっていたが、すべて白紙になってしまった。



実際に市販されたS50系2代目スカラインでは丸形テールランプが採用されていた。


 S4グロリアのデザインには石橋正二郎会長や石橋幹一郎取締役の意見が大きく反映されている。基本デザインは後にフラットデッキスタイルと呼ばれる、森の案が採用された。フルサイズのクレイモデルまで進んだところで、石橋会長から「もっと豪華に」との指示があった。そこでアメ車好きの山脇がメッキを多用したスケッチを描き、試作車のボディは変えないで外装の部品を変更した。森が風邪で2、3日休んでいて、出社するとグロリアはギラギラに変更されていた。

 荻窪の広場の中央へS4グロリアを持っていって、四方八方から光を当てた。石橋親子は「これだ」と気に入り、モデルが決定した。そこにはライカMを持った石橋幹一郎が陣取り、さらに細かい指示を出した。こうしてグロリアは、基本デザインはそのままにしてモールが増えていった。山脇がデザインしたグロリアのグリルの設計図は八木沼が描いた。モールディングは稲垣雄三が担当した。部品点数が多くなり、八木沼は設計に大変苦労した。

 デザイナーの山脇は車体設計出身だったので、クルマの知識は豊富だった。商品の価値をよく理解しており、石橋正二郎会長などの経営陣に近い考え方を持っていた。

 森は当時のS4グロリアのことを真摯な態度で述懐する。

「私は山脇さんの意見を採り入れ、フロントは派手になることに同意したが、リアだけはシンプルにすることに固執しました。左右のリアランプを結んだガーニッシュを張り豪華に見えるよう応急処理したが、今思うと若気の至りだったかもしれない。最初から山脇さんの案をリアにも採り入れておけばよかったと反省しています。53年経って今さら遅いかもしれませんね。あの時は30歳でまだデザインを深く理解していなかった」


S4グロリアの1/5モデル。フラットデッキの特徴であるフェンダーの上面と側面をつなぐプレスラインはこの時から存在した。石橋親子の意見でグリルはギラギラになった。

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掲載:ノスタルジックヒーロー 2012年4月号 Vol.150(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Tatuso Sakurai/桜井健雄

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