全高を1200mmにするか1300mmにするかで大問題に。フェアレディZの知られざる開発秘話|フェアレディZのシャシー設計者「植村 齊氏」に聞く Vol.2

カリフォルニア州モハベ砂漠を走行するフェアレディZのテスト部隊。カーシェイク、シミー、ロードノイズなど騒音振動性能にクレームが付き対策を迫られることとなった。

フェアレディZのシャシー設計者 植村 齊氏に聞く(その2)

初代S30フェアレディZは、9年ほどの販売期間を通じて全世界で約53万2000台が生産されるという大ヒットを記録。そんなZのシャシー設計を担当した植村齊氏に話を伺った。(本文中敬称略)


 開発当初特に問題になったのが全高。造形課は1200mmを主張したが設計課は1300mmを主張。造形課はトヨタ2000GT(全高1160mm)を強く意識していたが、設計課はポルシェ911(全高1300mm)を念頭に置いていたからだ。

 四本和巳造形課長と鎌原秀実課長が間に入り、最初に設計課が歩み寄り1280mmでレイアウトを進めた。だが、造形課は「さらに20mm削れ」と巻き返してきた。植村は「前方視界は悪くなるが、しようがない」と自分を納得させ、シートの位置を10mm下げ、さらに天井のトリムで10mm、合計20mmを稼ぎ出した。

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 シートについては、アメリカ空軍の男子の身長(平均187.5cm)を調べ、97.5%の男子が座れるように設計した。シートスライド量(実車を測定すると180mmで、さらに110mm可能)を大きく取り、ドライビングポジションを決定。

 空力特性Cd値を測定する風洞は追浜にもあったが、性能は良くなかった。できあがった実車を測定すると、0.472と悪い数字だったので、第3車両設計課の吉行和彦が急いでGノーズの理論計算をした。さらに床下にパネルを装着しフラットにし、スポイラーやランプカバーをつけることで、Cd値0.383を実現した。しかし、開口部をしぼったことで、海外向け耐熱条件をクリアできず、240ZGは国内向けに限定された。

 後面衝突試験はまだアメリカの安全基準(MVSS)では「提案」の段階だったが、ガソリンタンクがデフと干渉し、ガソリンが漏れるので、将来を見越して対策することになった。タンク容量を70Lから60Lに減らし、タンクの前方移動を規制するストッパーをつけ、デフを25mmへ前に出して、なんとかクリアした。
 しかし、このためドライブシャフトに後退角がつきカーシェイクの原因となった。そのため再度、後退角を取り除くために設計変更を余儀なくされた。しかし、この対策をやっていたおかげでPL訴訟が起こったとき、有利になったという側面もあった。

 1969年10月18日にフェアレディZは発表され、11月下旬に国内での発売が開始されたが、北米では1969年9月29日から12月28日まで、2台のフェアレディZの生産試作車をテストしていた。隊長は植村。エンジン担当の熊谷健二、実験課の土屋紫朗、日産車体の堀井尚文実験課長と大沢英二電装補器部長。場所によっては米国日産の阿部や現地のスタッフが加わった。

 北はロサンゼルスからサンフランシスコ、デスバレー、シアトル、カナダのバンクーバー、エドモントン、カルガリー、グレートフォールズ、ソルトレイク。南はロサンゼルスからヒューストン、ニューオリンズ、ダラスまで約2万kmを走破した。

 また、米国日産(西部地区)の片山豊のスタッフも参加し、女性モデルを使って宣伝用写真も撮影された。さらに米国日産(東部地区)へ市場状況を聞くためにニューヨークも訪問した。  

 こうしてフェアレディZの米国発売は着々と進められたが、カーシェイク、シミー、ロードノイズなど騒音振動性能にクレームが付き対策を迫られることとなる。カーシェイクは国内テストでは発見できなかったのだが、それは日本とアメリカとの評価基準が異なっていることに起因していた。
 
 その結果、アメリカでの発売は、日本での発売から3カ月遅れとなる1970年4月になってしまった。これは余談だが、アメリカでの発売が遅れたため、本来Z生誕50周年は2019年なのだが、発売を基準に考えると、アメリカでは2020年にあたることとなる。


女性モデルを使って米国日産の宣伝用写真も撮影された。

掲載:ノスタルジックヒーロー2010年10月号 Vol.141(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

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text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Ryoutetu Kamisato/神里亮徹

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