年産10万台規模の自動車メーカーへ! 戦後アルファの集大成ともいえる1台|アルファロメオ・ジュリアスプリント GT Vol.2

       
●1966年式 アルファロメオ・ジュリアスプリント GT

戦前から高性能の高級スポーツカーを売りにしてきたアルファ・ロメオ。

 しかし戦後になると時代の趨勢をうけ、より大衆に開かれた 量産メーカーへの転換を図ることを決意する。そんな彼らが時間をかけて導きだした回答こそが、稀代のスポーツGTジュリア・クーペだった。



関連記事:ベルトーネ時代。若きジウジアーロのひらめき|アルファロメオ・ジュリアスプリント GT Vol.1


1954年に登場しヒット作となったジュリエッタの成功を受け、2000/2600と、ジュリエッタの間を埋める新たな小型車として、開発されたのがジュリアだ。

 1962年にベルリーナのみでデビューを飾り、ジュリエッタの時と同様、そのクーペバージョンのデザインをベルトーネに依頼した。
 このときヌッチオ・ベルトーネの指揮の下でアウトラインを描いたのが、若き日のジョルジェット・ジウジアーロだったのだ。

 自動車デザインにロジカルな機能美をもたらした彼ならではのバランス感覚が存分に発揮されたスタイリングは、フランコ・スカリオーネがデザインしたジュリエッタスプリントを一夜にして過去へと追いやってしまうほどのインパクトをもっていた。

 しかしその一方で印象的な開放的で大きなグリーンハウスは自身がデザインした2000スプリントを、そしてグリルの中央に集められた2灯のヘッドライト、フェンダー先端のウインカーなどの特徴的な顔立ちは、1900フォーリセリエのうちの1台である、ギア・スーペルジョイエロ・クーペを彷彿とさせるなど、過去との連続性も感じさせるものに仕上がっていたのだ。


 そういう意味で、1963年9月にアルファロメオ・アレーゼ工場でお披露目されたジュリアスプリントGTは、戦後アルファの集大成というべき1台となった。
 軽量小型高出力のDOHCユニット、4輪独立懸架のサスペンション、ディスクブレーキ、5段ギアボックスetc.……アルファはそれまでグランプリで培ってきた先進技術を、このコンパクトでクリーンなボディに詰め込み、大衆に開放してみせた。

 そしてジュリアの成功により、アルファは悲願であった年産10万台規模の自動車メーカーへと登り詰めたのである。

 聞けばジュリアもこの時代の他車の例に漏れず、原初たるスプリントGTを頂点として、以降はコストダウン、合理化の波にもまれていくのだという。
 そうした視点で見ると、繊細な格子状のグリルをもつスプリントGTは、従来のハンドメイド的感覚と工業製品的感覚を併せ持つ、時代の生き証人といえるのかもしれない。


 ジュリアというと、どうしても輝かしいレースヒストリーをもつGTAにスポットが当たりがちになる。しかしこのように歴史をひもとくと、ジュリアスプリントGTこそ、近代アルファの源として永遠に記憶にとどめておくべき1台であることが、お分かりいただけると思う。


66年式 ALFA ROMEO GIULIA SPRINT GT
●全長 4076mm
●全幅 1587mm
●全高 1320mm
●ホイールベース 2350mm
●トレッド 前1310mm/後1270mm
●車両重量 950kg
●エンジン種類 水冷直列4気筒DOHC
●総排気量 1570cc
●ボア&ストローク 78×82mm
●圧縮比 9.0:1
●最高出力 106ps/6000rpm
●最大トルク 14.2㎏-m/2800rpm
●サスペンション 前ダブルウィッシュボーン+コイル/
         後トレーリングリンク+アームコイル
●ブレーキ 前後ともディスク
●タイヤ 前後とも155-15



いまや付いている個体が珍しい、オリジナルのエアクリーナーボックスがキレイに残されたエンジン・コンパートメント。ツインカムのヘッドにある凹みはこのインテークをクリアするためのものだ。



このホイールキャップの付く15インチ・スチールホイールも今や貴重品だ。


掲載:ノスタルジックヒーロー 2012年2月号 Vol.149(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Yoshio Fujiwara/藤原よしお photo:Daijiro Kori/郡 大二郎

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