マイクロフィルムに保管されていた図面たち|いすゞ自動車の歴史と技術を、次世代へ継承する Vol.2 

1932年式 スミダM型。イベントなどでは体験走行にも使われている。

       
●エルフ誕生60周年を迎えたいすゞ自動車

メーカーがレストアを行うことの大きなメリットの1つが、当時の資料が残っているという点だ。いすゞ自動車でも、パーツの図面はほとんどがマイクロフィルムに保管されていた。

 そこからパーツを再現できるのが、何より大きかったという。特に近年では、3Dプリンターを利用できるので、図面の存在はかなり役立ったそうだ。


1973年式 シボレー LUV(ラブ)
ファスターをレストアしようと車両を探したところ見つからなかったため、シボレーLUVとして販売された輸出仕様も対象に探索。米国法人にe-bayで落札してもらったという。


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 一方でボディカラーなどは苦労したそうで、NHKのアーカイブス映像を調べたり、ボディに残ったわずかな塗料を分析したり、それでも分からないものは、白黒写真から当時の色味を判断することもあったそうだ。

 このように、社内に資料が残っていない部分については、長年のいすゞファンやユーザーの協力も欠かせない。展示車両にかかわる資料の提供や、間違いを指摘してくれるユーザーもいたそうだ。

そのように情報が集まってくるのもまた、メーカーがレストアを行っている大きな意義といえるだろう。

 いすゞ自動車のレストアは、極力当時の姿を忠実に再現することにこだわって行われている。さまざまな手段を使ってパーツを探し、見つからないパーツは製作する。

 時には国内で見つからない車両そのものを、海外のオークションで入手することもある。メーカーとして深いこだわりと愛情を持ってレストア事業が行われているのだ。






1973年式 シボレー LUV(ラブ)
取材時はレストア途中のためエンジン未搭載で、内装も未完成だったが、現在はレストアも完了し、いすゞプラザに展示されている。




シボレーLUVのリアバンパーは入手時に欠損していたため、図面をもとにしてそのとおりに鋼板を叩き出して製作。






ダッシュボード部分に装着されるスピーカーグリルは、図面をもとに3Dデータを作成して樹脂造形機(3Dプリンター)を使って製作された。





パーセルシェルフも3Dプリンターにて作成。塗装やメッキを行えば、そのまま部品として使用できる。



1932年式 スミダM型
50年以上にわたって栃木工場に保管されていた個体。2007年にレストアされ、以降モーターショーでの展示や、イベントで乗客を乗せてのボンネットバス体験走行などに用いられている。



掲載:ノスタルジックヒーロー 2019年10月号 Vol.195(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Satoshi Kamimura/神村 聖

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